歯を抜くことになったけど、どんな治療法を選べばいいんだろう?
インプラントを勧められたけど、インプラントに代わる治療法はないのかな?
とお悩みの方。
実は歯を失った際に選べる治療法は、インプラントを含めると大きくわけて5つあります。
しかし、どの治療法にも一長一短があり、患者さまの
- お口の中の状態
- 歯への意識
- 生活スタイル
- 金銭状況
などによって、ベストな治療法は異なるのです。
そこで本記事では、日本口腔インプラント学会所属の歯科医師・田口が、「インプラントに代わる治療法」について徹底解説していきます!
歯を失ったあとの治療法選びが難しい場合に、参考にしていただければ幸いです。
では、さっそく本文にうつっていきましょう^^
【執筆・監修者】田口 耕平
日本接着歯学会
日本口腔インプラント学会
日本補綴歯科学会・専門医
国際口腔インプラント学会・認定医
日本糖尿病協会登録歯科医
北戸田COCO歯科 院長
【詳しい経歴はこちら】
1:そもそもインプラントとは?他の治療法との違い
インプラントとは、歯を失ったとき(抜いたとき)に選択できる治療法の1つです。
周囲の歯の力を借りない自立した人工歯のため、
①両隣の歯を削る必要がない
②噛むときに、他の歯に負担がかからない
③生活の質が上がる
④見た目が自然で人工歯だと気づかれにくい
⑤耐久性が高い(寿命が長い)
といった5つのメリットがあります。
そのため、
- 初期費用の安さより、見た目や使い心地を重視したい
- これ以上は歯を失いたくない
- 老後もしっかり噛んで食事を楽しみたい
- 再治療が少なく、長く持つ歯を入れたい(約10~15年以上)
など、長期的コスパを優先し、歯への投資価値を感じている方におすすめの治療法です。
一方で、
- 保険適用外のため治療費がかかる
- 治療期間が数ヶ月かかる
- 外科手術が必要になる
- 定期メンテナンスの必要性が高くなる
- 歯科医師(歯医者)の違いで治療結果に大きな差が出る
といった5つのデメリットもあるため、使い心地や耐久性よりも
- 治療期間を短く
- 初期費用を安く
- 外科手術なし
を優先したい方には、不向きな治療法だといえます。
では次に、インプラントに代わる治療法の特徴について紹介していきますね!
2:【比較表あり】インプラントに代わる4つの治療法
インプラントに代わる治療法は、大きくわけて4つあります。
▼インプラントに代わる治療法の比較表
ブリッジ | 入れ歯(義歯) | 歯牙移植 | 接着ブリッジ | |
---|---|---|---|---|
治療イメージ | ||||
治療期間※1 | 約2週間 | 約1ヶ月~2ヶ月 | 約2ヶ月~6ヶ月 | 約1ヶ月 |
保険相場(目安)※2 | 約1万円~2万円 | 約5千円~2万円 | 約9千円※3 | 約2万円※3 |
自費相場(目安)※4 | 約5万円~15万円 | 約15万円~80万円 | 約20万円 | 約30万円 |
平均寿命 | 約7~8年 | 約4~5年 | 約5~10年 | 約5~10年 |
どこの歯医者でも治療を受けられるか | 受けられる | 受けられる | 限定的 | 限定的 |
では次に、それぞれの治療法について詳しくお話していきます。
2-1:ブリッジ
ブリッジとは、歯を失った部位の両隣の歯を削り、固定式の連結した被せものをいれる治療法です。
- 保険適用で治療費を安く済ませたい
- 外科手術を受けたくない
- 治療期間を短くしたい
- 固定式の人工歯を希望している
方には、メリットの大きい治療である一方で、
- 隣接した歯を大きく削る必要がある
- 土台の歯に負担がかかり、歯が割れやすい
- 土台の歯の状態が悪いと、適応しにくい
- 寿命が短く再治療のリスクが高い
といったデメリットもあり、長期的コスパや耐久性を重視したい方には不向きの治療法になっています。
2-2:入れ歯(義歯)
入れ歯(義歯)とは、歯を失った部位に取り外し式の人工歯を入れる治療法です。
- 保険適用で治療費を安く済ませたい
- 抜けた歯の本数が多い
- 外科手術を受けたくない
方には、メリットの大きい治療である一方で、
- 違和感が大きく慣れるまでに時間がかかる
- 硬いものを噛みにくい
- お口の変化に合わせて、調整が必要
- 保険適応のものは、特に見た目が良くない
- 部分入れ歯は、金具が他の歯への負担になる
- 入れ歯の範囲が大きいと、発音しにくくずれやすい
- 寿命が短く、長持ちしにくい
といったデメリットがあり、使用感・見た目・耐久性を重視したい方には不向きの治療法になっています。
2-3:歯牙移植
歯牙移植とは、歯を失った部位に噛み合わせと関係ない歯(親知らずなど)を移植する治療法です。
他の治療法とは異なり、治療に自分の歯(天然歯)を使用するため、
- 歯根膜があり、人工歯よりも食感や温度を感じやすい
- 歯根膜があり、噛み合う歯のダメージを軽減できる
- 手術負担が少ない
- 歯牙移植した歯も矯正治療で動かせる
といったメリットがあり、歯を失う前と同じような感覚で移植した歯を使用できます。
一方で、
- 治療の難易度が高く、どこの歯医者でも受けられる治療ではない
- 一定条件を満たさないと、歯牙移植の治療は受けられない
- 人工歯ではないため、虫歯のリスクが残る
- 移植には健康な歯が必要なため、高齢者には不向きなケースが多い
といった治療できる歯医者(歯科医師)が限られている点がデメリットだと言えます。
2-4:接着ブリッジ
接着ブリッジとは、従来のブリッジとは異なり、両隣の健康な歯の裏側を少し削って人工歯を接着させ、歯がない部分を補う治療法のことです。
従来のブリッジとは異なり、
- 健康な歯をほぼ削らずに済む
- 二次的な虫歯になりにくい
- 歯の神経を残せる
- 審美性が高い
といったメリットがあるため、治療期間が短く患者さまの負担が少なくなっています。
一方で、
- 従来のブリッジよりも外れやすい
- 誰でも選べる治療法ではない(適応条件が限られている)
- どこの歯医者でも受けられる治療法ではない
といったデメリットがあるため、適応症例に当てはまらない場合には不向きな治療法だといえます。
では次に、インプラントに代わる治療法を選ぶ際の4つのポイントを紹介していきます!
3:インプラントに代わる治療法を選ぶ際のポイント4選
インプラントに代わる治療法を選ぶ際のポイントは、
- 初期費用やランニングコスト
- 使用感や見た目
- 治療期間や手術負担
- 周囲の健康な歯への影響
の4つです。
それぞれどういうことかお話していきますね!
3-1:初期費用やランニングコスト
インプラントに代わる治療法を選ぶ際の1つ目のポイントは、「初期費用やランニングコスト」です。
例えば、初期費用の視点で治療法を選ぶと、保険適用になる「ブリッジ」「入れ歯」は初期費用が安く、そこまでお金をかけずに人工歯を入れられます。
ただし、保険適用の治療は細かいルールが定められているため、
- 治療方法・材料・治療時間に制限があり、妥協的な治療になる可能性が高い
- 場合によっては、ベストな治療を受けられない
といったデメリットがあり、自費診療の治療に比べて、「使用感」「耐久性」「審美性」などが劣るケースが多いです。
特にランニングコストや長期視点で考えると、再治療のリスクが高くなりがちな保険適用の治療は治療回数が増える影響で、
- 治療費がかさむ
- 健康な歯がどんどん減って、お口全体の健康を害す
といった問題点もあるため、注意しなければなりません。
そういった点から、歯を失った際には「初期費用の安さ」だけを重視して治療法を選ばないようにするのがおすすめです。
3-2:使用感や見た目
インプラントに代わる治療法を選ぶ際の2つ目のポイントは、「使用感や見た目」です。
歯を失った部位に代わりになる歯を入れると、思ったよりも強い違和感を覚える方がいます。
お口の中は、髪の毛が1本入るだけでも気付くくらい繊細な場所ですし、話しているときにも目がいきやすい部位なので、当然と言えば当然でしょう。
そのため、インプラントに代わる治療法を選ぶ際は、見た目や使用感のイメージも事前に歯科医師から話を聞いておくのがおすすめです。
特に保険適用の入れ歯(義歯)は、入れたあとに見た目や使用感にストレスを感じる方が多いです。
注意してくださいね!
3-3:治療期間や手術負担
インプラントに代わる治療法を選ぶ際の3つ目のポイントは、「治療期間や手術負担」です。
基本的には、手術が必要な治療法は治療期間が長くなる傾向があります。
そのため、治療を手早く済ませたい方や手術への抵抗感が強い方には不向きの治療法です。
ただし、手術が必要になる治療法は、土台となるあご骨にしっかり歯を埋め込む関係で、治療後の使用感や耐久性は高くなります。
実際の手術も日帰りで数時間程度で終わるケースが多いですし、痛みへの不安が強い方は静脈内鎮静法を利用できる歯医者もあります。
不安な方は、一度担当医と相談してみてくださいね!
▼治療期間や手術の有無の比較
ブリッジ | 入れ歯(義歯) | 歯牙移植 | 接着ブリッジ | インプラント | |
---|---|---|---|---|---|
治療イメージ | |||||
治療期間※1 | 約2週間 | 約1ヶ月~2ヶ月 | 約2ヶ月~6ヶ月 | 約1ヶ月 | 約4ヶ月~5ヶ月 |
手術の有無 | 無し | 無し | 有り | 無し | 有り |
※:治療期間はお口の中の状態や治療法によって、大きく前後するケースがあります。
3-4:周囲の健康な歯への影響
インプラントに代わる治療法を選ぶ際の4つ目のポイントは、「周囲の健康な歯への影響」です。
歯を失った際の治療法は、新たに入れる歯が隣接する歯に依存するか否かで周囲の歯へのダメージが変わってきます。
具体的には、
- ブリッジ
- 入れ歯
- 接着ブリッジ
は、隣接した歯の力を借りて、歯がない部分を補います。
そのため、健康な周囲の歯に及ぼす悪影響が大きいです。
※接着ブリッジは、通常のブリッジよりも歯を削る範囲が狭くなります。そのため、周囲の歯への悪影響を少なくすることが可能です。
一方で、
- 歯牙移植
- インプラント
は、隣接した歯の力を借りない自立式の構造になっています。
そのため、健康な周囲の歯に余計なダメージを与えずに済むのです。
周囲の歯に依存する治療法には、外科手術がありません。
しかし、健康なはずの残りの歯にもどんどんダメージを負わせ、寿命を短くしてしまう大きなデメリットがあります。
お口全体の健康を長期で考える場合には、そういった視点も持って治療法を選んだほうが良いでしょう!
4:インプラントに代わる治療法選びに迷った際の相談先
ここまで読んで、インプラントに代わる治療法のうち、どれを選べばいいかわからなくなってしまったら、総合的な治療が可能な歯医者で相談をするのがおすすめです。
というのも、一口に歯医者(歯科医師)といっても、それぞれ得意・専門分野が異なります。
「積極的にアドバイスできる内容」と「そうでない内容」に差が出やすいので、様々な治療が可能な設備や歯科医師が整った歯医者に相談すると、中立的な立場から意見をもらいやすいです。
具体的には、
- ブリッジ
- 入れ歯(義歯)
- インプラント
- 歯牙移植
- 接着ブリッジ
すべての治療法を選べる歯医者での相談がおすすめになります。
ちなみに、当院ではすべての治療法への対応が可能です。
1つの治療法だけを強く推奨することもありません!
ご希望の場合には、カウンセリングルームでじっくりお話を伺うこともできますので、遠慮なくご相談くださいね!
5:インプラントに代わる治療法の結論
それでは最後に、インプラントに代わる治療法の重要なポイントを簡単におさらいしていきます。
インプラントとは、歯を失ったとき(抜いたとき)に選択できる治療法の1つです。
一方で、インプラントに代わる治療法は、
①ブリッジ
②入れ歯(義歯)
③歯牙移植
④接着ブリッジ
の4つがあります。
それぞれ一長一短があるため、
・初期費用やランニングコスト
・使用感や見た目
・治療期間や手術負担
・周囲の健康な歯への影響
の4つをポイントに治療法を選ぶのがおすすめです。
また、どの治療法を選んだほうがいいのか判断に迷われた場合には、
・ブリッジ
・入れ歯(義歯)
・インプラント
・歯牙移植
・接着ブリッジ
すべての治療法が選べる歯医者で相談してみましょう!
それぞれの治療法のメリット・デメリットを比較した上で、あなたのお口の環境に適した治療法を提案してくれるはずですよ^^
以上、今回はインプラントに代わる治療法についてお話しました。
歯を失った後の治療法選びは、その後のお口全体の健康を左右する重要な決断になります。
ぜひ、信頼できる歯医者(歯科医師)のもとで、さまざまな情報を比較し、あなたにとってベストな治療法を選んでくださいね!