歯医者でインプラントを進められたけど、よくわからない。
治療費も高いし、気軽に選べない。
など、セカンドオピニオンで当院を利用された患者さまから相談を受けることがあります。
たしかにインプラントが何かよくわからない状況では、判断ができませんよね。
そこで本記事では、日本口腔インプラント学会所属の歯科医師・田口が、「そもそもインプラントって何?」といった疑問をまとめてスッキリ解消する内容を紹介します。
歯科治療にあまり詳しくない一般の方にもわかるように、できるだけ画像を使いながら簡単に説明しますのでぜひ参考にしてください!
【執筆・監修者】田口 耕平
日本接着歯学会
日本口腔インプラント学会
日本補綴歯科学会・専門医
国際口腔インプラント学会・認定医
日本糖尿病協会登録歯科医
北戸田COCO歯科 院長
【詳しい経歴はこちら】
1:そもそもインプラントとは何か?7つのよくある質問
「そもそもインプラントとは何か?」を知りたい場合には、以下の7つのよくある質問をチェックしてみるのがおすすめです。
①インプラントの構造と歴史
②どんなときにする治療なの?
③インプラントは誰でも・何歳でもできる?
④インプラント治療の流れや手術について
⑤他の治療法と比較!費用・治療期間・平均寿命は?
⑥歯医者によって値段が違う理由は?
⑦CT・MRI撮影や空港の金属探知機など入れて問題は起きないの?
これが分かれば、あなたもインプラントマスター!他の治療法との比較もしやすくなりますよ。
1-1:インプラントの構造と歴史
インプラントは、1965年(日本では1983年)から取り入れられた約56年の歴史がある治療法です。
- 目視で確認できる上部構造(被せ物)
- あご骨の中に埋め込むインプラント体
- 上部と下部を連結するアバットメント
の3つからできています。
インプラント体とアバットメントは、金属の中でもアレルギー症状が出にくい「チタン製」ですので、安全性が高いです。
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1-2:どんなときにする治療なの?
インプラントは、歯を失ったとき(抜いたとき)に選択する治療法です。
歯を失ったときに選べる他の治療法には、
- 歯牙移植
- ブリッジ(連結した被せ物)
- 入れ歯
があります。
1-3:他の治療法と比較!費用・治療期間・平均寿命は?
他の治療法との大まかな比較は、以下をご覧ください。
- 歯を失ったときの治療法の比較
ブリッジ | 入れ歯 | インプラント | 歯牙移植 | |
保険相場※2 | 約1万円 ~2万円 | 約5千円 ~2万円 | - | 約9千円 |
自費相場 | 約5万円 ~15万円 | 約15万円 ~80万円 | 約20万 ~40万円※4 | 約10万円 ~15万円※3 |
治療期間 | 約2週間 | 約1ヶ月 ~2ヶ月 | 約2ヶ月 ~3ヶ月※1 | 約2ヶ月 ~6ヶ月 |
平均寿命 | 約7年~8年 | 約4年~5年 | 約10年 ~15年以上 | 約5年~10年 |
※1:インプラントは顎の骨が少ない場合に、治療期間がさらに3~9ヶ月前後のびます。
※2:保険は3割負担の場合の料金です。
※3:歯牙移植は、1本あたりの相場です。
※4:公益社団法人日本口腔インプラント学会で2015年に調査されたデータです。2022年時点では、オプションを含む総額で1本あたり約30万~40万円かかるケースが多いです。
第1選択として、自分の歯を使える歯牙移植が可能であれば検討してみるのがおすすめです。
ただし、歯牙移植をするためには、一定条件をクリアする必要があります。
ブリッジ・入れ歯・インプラントは一長一短があるので、治療法を選ぶ際はしっかり比較検討しましょう。
一時的にかかる費用だけで判断してしまうと、長期的にはコストや時間の面で損をしてしまう可能性が高いです。
注意をしてくださいね!
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1-4:インプラントは誰でも・何歳でもできる?
インプラントは、
の5つのケースのどれかに当てはまる場合は、治療ができないケースがあります。
ただし、どのケースにも対処法が存在します。
「絶対にできない!」ということはないので、まずはインプラントに精通した歯科医師に相談をしてみるのがおすすめです。
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1-5:インプラント治療の流れや手術について
インプラントは、埋め込むために外科手術が必要になります。
大まかな流れは、以下のとおりです。
①カウンセリング・検査
②治療計画や治療費の説明
③手術
④被せもの(人工歯)作成と装着
⑤メンテンス
手術自体は入院の必要もなく、日帰りで終わります。
しかし、あご骨とインプラントがくっつくのを待つために、他の治療法に比べて治療期間がかかります。
具体的には、
- 骨が十分にある場合:約4~5ヶ月
- 骨が少ない場合:約7~13ヶ月
の治療期間がかかるケースが多いです。
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1-6:歯医者によって値段が違う理由は?
歯医者によって値段が違うのは、インプラントが自費診療で保険適応の治療のように明確な決まりがないことが関係しています。
具体的には、
①インプラントを埋め込む位置や本数
②インプラントの種類
③担当医の技術
④ドクターやスタッフの質・人数
⑤歯医者の設備
⑥感染対策にかけるコスト
⑦保証の有無と内容
⑧立地条件
⑨上部構造(被せ物)
といった9つの理由で、歯医者によって値段の違いが出るケースが多いです。
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1-7:CT・MRI撮影や空港の金属探知機など入れて問題は起きないの?
インプラントが、
- CTやMRI撮影
- 空港の金属探知機
で問題になることはありません。
なぜなら、歯科インプラントはチタンでできており、それぞれの検査でエラーを起こす素材が使われていないからです。
ただし、磁石を併用したインプラントオーバーデンチャー(インプラント+入れ歯)の場合には、CTやMRI撮影でトラブルが発生することもあります。
磁石部分は取り外せるので、検査前にインプラントを入れたかかりつけ医に相談をしてみましょう。
CTやMRI検査で、検査に影響がでないレベルでインプラント付近に小さな影が出ることがあります。
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では次に、インプラントのメリットを紹介していきますね。
2:インプラントのメリットとは何か?4つのポイント
インプラントの代表的なメリットは、以下の4つです。
・両隣の歯を削る必要がない
・他の歯に負担がかからない
・生活の質が上がる
・見た目が自然で人工歯だと気づかれにくい
どういうことか、それぞれ解説しますね。
2-1:両隣の歯を削る必要がない
インプラントは、歯を失った部分に埋め込む自立した人工歯です。
両隣の歯を削る必要がなく、健康な歯の寿命を縮めることがありません。
一方で、ブリッジは両隣の健康な歯を削り、上から人工歯を被せる形で歯がない部分を補います。
その影響で、本来は問題がないはずの2本の歯の寿命を縮めてしまうのです。
1回削った歯は、人工歯で補っても元に戻ることはないので治療選択は慎重に行う必要があります。
お口全体の健康を長期的に維持したい方には、インプラントは優れた治療法だと言えますね!
2-2:他の歯に負担がかからない
先程もお伝えしたとおり、インプラントは自立した人工歯です。
歯に噛む力がかかっても、自分の歯のように負荷を受け止められるため、両隣の歯にダメージを与えません。
一方で、ブリッジや入れ歯は両隣の歯を土台にして、歯がない部分にかかる噛む力を補っています。
他の歯に比べて負担が集中しやすい影響で、割れたり痛みが出たりしやすくなるのです。
両隣の歯にダメージがかかり続けると、最悪の場合は土台の歯の根が割れて、抜くことになってしまうケースもあります。
ブリッジや入れ歯を選ぶ場合は、上記の点に注意しましょう!
2-3:生活の質が上がる
インプラントは、自立した人工歯なので使用感が天然歯(自分の歯)とほとんど変わりません。
そのため、入れ歯やブリッジを使用するよりも生活の質をあげられます。
中には、
歯が1本入れ歯になっても、そんなに気にならないんじゃないの?
といったご意見もありますが、お口の中は髪の毛1本入っても強い違和感を感じるくらいに敏感です。
入れ歯の異物感や不快感に、慣れない方は多いでしょう。
また、自分の歯に比べると入れ歯は、咀嚼率(そしゃくりつ:物を噛む力)が約20~30%は低下します。
食事の楽しみを大きく減らす原因になるでしょう。
ブリッジは、入れ歯に比べると違和感は少なめですが、歯ぐきと人工歯の境目に汚れが溜まりやすく虫歯や歯周病を発症しやすくなるデメリットがあります。
上記の点から、「自分の歯のように長く使い続けたい」というご希望がある患者さまはインプラントを選ぶメリットが大きくなります。
2-4:見た目が自然で人工歯だと気づかれにくい
インプラントは自立した人工歯なので、天然歯(自分の歯)との違いに気づかれることはほとんどありません。
しかし、保険適応のブリッジや入れ歯は残念ながら、人工歯であることが気づかれやすくなっています。
なぜなら、ブリッジや入れ歯には、
- 経年劣化で変色する
- 歯ぐきと人工歯の境目が目立つ
- 土台に引っ掛ける金具が目立つ
- 歯ぐきの部分の色が明らかに異なる
といった点で審美面を損ねるデメリットがあるからです。
では次に、インプラントのデメリットを紹介していきます。
3:インプラントのデメリットとは何か?4つのポイント
インプラントのデメリットは、以下の4つです。
①手術が必要になる
②治療期間が長い
③保険治療と比較して高額になる
④積極的に清掃&禁煙をする必要がある
どういうことか、それぞれ詳しく紹介しますね。
3-1:手術が必要になる
インプラントはアゴ骨に埋め込むため、外科手術が必要になります。
ただし、手術自体は日帰りで入院の必要もなく、簡単なものであれば1本あたり約30分程度で埋め込むことが可能です。
当院では手術時の不安が強い方向けに、心理面をリラックスできる静脈内鎮静法(じょうみゃくないちんせいほう)もご用意しています。
局所麻酔と合わせることで、心身ともにリラックスした状態で手術を受けていただけますよ!
3-2:治療期間が長い
インプラントは、ブリッジや入れ歯などの他の治療法に比べると、治療期間が長いです。
ただし、実際にはインプラントとアゴ骨が結合するのを待つ期間が大半になるので、ずっと通院し続けていただくわけではありません。
治療が終わるまで待っていただいた分、ブリッジや入れ歯よりも長く使い続けていただけるのがインプラントです。
自分の歯と同じように長期間使い続けるための準備期間だと考えてみてくださいね!
3-3:保険治療と比較して高額になる
保険適応の入れ歯やブリッジに比べると、インプラントは自費診療のため治療費が高額になります。
ただし、長期的なコスパやお口の健康といった一時的な金銭面では測れない部分で考えると、総合的な損得ではインプラントを選ぶメリットが大きいでしょう。
なぜなら、保険適応の入れ歯やブリッジは寿命が短く、作り直しをするたびにお金がかかるだけではなく、周囲の歯にもダメージを与えてしまうからです。
歯の治療は、そう何度もできるわけではありません。
繰り返し治療を行う影響で、どんどん歯の寿命を縮めてしまう結果に結びつき、負の連鎖を起こしてしまうのです。
老後も、食事を食べるを感じるためにも、長期目線でお得な治療法を比較検討してみてくださいね!
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3-4:積極的に清掃&禁煙をする必要がある
インプラントを長く使い続けるためには、積極的な清掃と禁煙が必要になります。
ただし、これはインプラントに限った話ではありません。
人工歯ではなく、天然歯(自分の歯)であってもメンテンスや日々のお手入れ、禁煙(節煙)をしなければ、お口の健康寿命がどんどん縮まってしまうのです。
インプラントは通常の歯よりも丁寧なケアが求められますが、結果的に他の天然歯(自分の歯)も綺麗に保つことに繋がるので、お口全体の健康を維持しやすくなります。
ぜひ、インプラントを入れる入れないに関わらず、メンテンスや日々のお手入れ・禁煙(節煙)を心がけましょう!
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4:インプラントとは何か?の結論
では最後に、インプラントとは何か?の重要なポイントだけを簡単におさらいしていきます。
インプラントとは、約56年の歴史を持つチタンでできた無くなった歯を補うための自立した人工歯です。
自費診療のため歯医者によって値段は異なりますが、一部のケースを除いて成人していればほとんどの人が治療が可能になります。
治療期間や治療費がかかる代わりに、他の治療法よりも長持ちするだけではなく
・お口全体の健康を維持しやすい
・見た目がほとんど自分の歯と変わらない
・機能面もほとんど自分の歯と変わらない
といったメリットがあります。
また、手術は必要になりますが、簡単なものであれば1本あたり約30分で埋め込むことが可能です。
以上、今回はインプラントをよく知らない方に向けた内容を紹介しました。
インプラントは長期目線で見て、老後も今と同じように食事やおしゃれを楽しみたい方にメリットの大きい治療法です。
お口の中の状態や患者さまのご希望によって、おすすめできる治療法も異なります。
気になる場合には、ぜひ一度直接ご相談くださいね^^