インプラントのように外科手術が必要な治療の場合、
- コロナワクチン
- インフルエンザワクチン
など、予防接種前後の治療のスケジュールをどのように決めれば良いのか迷いますよね。
そこで本記事では、日本口腔インプラント学会所属の歯科医師・田口が
①インプラント手術後のワクチン接種のタイミング
②ワクチン接種後のインプラント手術のタイミング
③インプラント治療の初回予約とワクチン接種について
④ワクチン接種とインプラント以外の歯科治療のタイミング
の順に、ワクチン接種とインプラントをはじめとした歯科治療を受けるタイミングについて詳しく解説していきます。
ぜひ、参考にしてくださいね!
本記事は2021年6月21日に、日本口腔外科学会から発表された「mRNA COVID-19ワクチン接種と口腔外科手術のタイミングについて」を参考に作成しております。
今後、厚生労働省から新たな見解が出た場合などには、内容を変更する可能性がございますのであらかじめご了承ください。
【執筆・監修者】田口 耕平
日本接着歯学会
日本口腔インプラント学会
日本補綴歯科学会・専門医
国際口腔インプラント学会・認定医
日本糖尿病協会登録歯科医
北戸田COCO歯科 院長
【詳しい経歴はこちら】
1:インプラント手術後のワクチン接種のタイミング
局所麻酔下および静脈内鎮静下で行ったインプラント手術後のワクチン接種のタイミングは、
- コロナワクチン:1週間以上空けて抜糸後に接種
- インフルエンザワクチン※1:1週間以上空けて抜糸後に接種
するのが望ましいとされています。
術後1週間以上の期間を空けるのは、手術や麻酔による免疫機能の低下が抗体産生に悪影響を及ぼさないようにするためです。
ただし、全身麻酔を必要とするような大規模な口腔外科手術を行う場合には、1~2週間以上の待機期間が推奨されています。※2
また、術後に処方される抗生物質や鎮痛薬は、ワクチン接種日に服用していないようにスケジュールを組んだほうが良いでしょう。
術後の状態によっても、ワクチンの接種タイミングは変わってきます。詳しくは担当医に直接確認してくださいね!
では次に、ワクチン接種後にインプラント手術を行う場合のタイミングについて紹介していきます。
※1:インフルエンザワクチンは、不活化ワクチン(注射)と生ワクチン(経鼻噴霧)があります。不活化ワクチンの待機期間は1週間以上ですが、生ワクチンの場合はさらに待機期間が伸びるケースがあります。詳しくは担当医にご確認ください。
※2:インプラントは局所麻酔での外科手術が可能なため、通常は全身麻酔が必要ありません。
2:ワクチン接種後のインプラント手術のタイミング
ワクチン接種後に局所麻酔下および静脈内鎮静下でインプラント手術を行う場合は、
- コロナワクチン:接種後3日以上空けて手術
- インフルエンザワクチン※1:接種後3日~1週間以上空けて手術
するのを推奨されています。
ただし、上記はあくまでも接種後に副反応が軽度だった場合です。
次に紹介するような副作用の症状が出ている場合には、インプラント手術のタイミングを延期したほうが良いでしょう。
2-1:手術を延期したい副作用の症状
ワクチン接種後に、
- 発熱
- 悪寒
- 下痢
- 吐き気、嘔吐
等の症状が出ている際には、無理をせずにインプラント手術の日程を延期しましょう。
なぜなら、体調が万全な状態でないときに外科手術を行ってしまうと、術後に傷の治りが悪くなったり血が止まりにくくなったりするケースがあるからです。
気になる症状が出ている場合には、焦らず担当医とよく相談して手術の日程を再度決めてください。
では次に、これからインプラント治療を受けようと思っている方の予約のタイミングについて紹介していきます。
3:インプラント治療の初回予約とワクチン接種について
これからインプラント治療を受けたいけど、ワクチン接種の予定があるから予約は取らないほうがいいかしら?
とお悩みの方。
インプラントを希望される場合、通常は
①カウンセリング
②診断・検査
③治療計画や治療費のご説明
④インプラント手術
⑤被せもの作成と装着
⑥メンテナンス
という流れで治療が進みます。
つまり、初回のご予約時にすぐ手術が行われるわけではありません。
初回のご予約は、副作用がお辛い状態でなければいつでも大丈夫です。
また、ワクチン接種を控えた状態でスケジュールを決める際は、担当医と相談をしたほうがご心配も少ないと思います。
では次に、インプラント以外の歯科治療をする場合のワクチン接種のタイミングについて紹介していきます。
4:ワクチン接種とインプラント以外の歯科治療のタイミング
インプラント以外の歯科治療をする場合のワクチン接種のタイミングは、大きく
- 外科処置を含む抜歯などの歯科治療
- 外科処置を含まない通常の歯科治療
によって違いが出ます。
それぞれどういうことか解説していきますね!
4-1:外科処置を含む抜歯や小手術などの歯科治療
外科処置を含む抜歯や小手術などの歯科治療は、ここまで紹介したインプラント治療と同様に、
- 外科処置後、1週間以上経ってからワクチン接種
- ワクチン接種後3日以上経ってから、副反応の様子をみて外科処置
が理想的です。
ただし、
- 手術範囲や難易度
- 患者さまの健康状態
などによっては、担当医からの提案で上記の期間外で治療を進めたりワクチン接種を勧められるケースもあります。
自己判断せず、詳しくは必ず担当医に確認するようにしましょう!
4-2:外科処置を含まない通常の歯科治療
外科処置を含まない通常の歯科治療のタイミングは、現時点で特に制限はありません。
ただし、歯科治療の内容や患者さまの状態によっては、治療後に痛みや腫れが発生するケースがあります。
ちょうど歯科治療後にワクチン接種のタイミングに重なると、副反応が出てしまうと歯の痛みや腫れを強く感じてしまうケースがあるでしょう。
そのため、ご心配な場合には、通常の歯科治療であっても事前に担当医と相談して治療タイミングを決めるのがおすすめです。
また、ワクチン接種後に副反応が出ていて体調がお辛い場合には、治療の予約をずらしてもらうこともできます。
お急ぎの治療でない場合には、体調を優先されてくださいね。
4-3:歯医者のクリーニングは感染予防におすすめ
ワクチン接種のタイミングとは関係ありませんが、歯医者のクリーニングは感染予防にもおすすめ!
というのも、適切な口腔ケアを行うとインフルエンザの発症率が10分の1に下がるというデータがあるからです。※
毎日自宅で歯磨きを頑張っていても、目に見えない歯の汚れや細菌がお口の中にはたくさん残っています。
ぜひ、専門的な口腔ケアを受けて感染予防に力を入れていきましょう!
5:ワクチン接種とインプラント治療のタイミングの結論
それでは最後に、ワクチン接種とインプラント治療のタイミングについて重要なポイントをおさらいしていきます。
局所麻酔下および静脈内鎮静下で行ったインプラント手術後のワクチン接種のタイミングは、
・コロナワクチン:1週間以上空けて抜糸後に接種
・インフルエンザワクチン※1:1週間以上空けて抜糸後に接種
が望ましいです。
一方で先にワクチン接種をしている場合には、副反応の様子を見つつ
・コロナワクチン:接種後3日以上空けて手術を行う
・インフルエンザワクチン:接種後3日~1週間以上空けて手術を行う
のを推奨されています。
インプラント治療の初回予約のタイミングは、副反応が辛くなければいつでもOKです。
これからワクチン接種を控えている方は、今後のスケジュールについても担当医に相談しましょう。
インプラント以外の歯科治療は、外科処置があるか否かで治療のタイミングが異なります。
抜歯などの外科処置がある場合には、インプラント治療と同様のタイミングでの治療を進めましょう。
外科処置がない一般的な歯科治療については、特に制限がないので担当医と相談して治療のタイミングを決めるのがおすすめです。
以上、今回はワクチン接種とインプラント治療のタイミングについて紹介しました。
ここまで紹介した内容はあくまでも目安の期間ですので、ご心配な場合には自己判断せず担当医に相談されるのが1番確実です。
当院では、患者さま個人個人の状態に合わせて適切な治療のスケジュールをご提案させていただきます。
ご不安な場合には、ぜひ遠慮なくお問い合わせくださいね!