インプラントを入れると、歯周病になりやすいって聞いたことあるんですけど本当ですか?
そんな質問を患者さまからいただくことがあります。
結論からお伝えすると、答えは「YES」です。
ただし、「じゃあ、天然歯(自分の歯)なら歯周病になりにくいのか?」というとそうではありません。
「インプラント」と「天然歯」を比べたときに、インプラントのほうがより歯周病リスクが高いだけで、天然歯でもインプラントと同様の対策を打たなければ歯周病になる確率が高いです。
日本人は、35歳を超えると8割以上が歯周病にかかっているという調査結果が厚生労働省からも公表されていますから…。
そこで本記事では、日本口腔インプラント学会所属の歯科医師・田口が、インプラントも天然歯も長く使っていくために役立つ「インプラントと歯周病」について詳しく紹介していきます。
具体的には、
- インプラントが歯周病になりやすい3つの原因
- 歯周病になりやすいインプラントの管理を放置するリスク
- インプラント周囲炎の予防法
の順に重要なポイントを一般の方にもわかりやすく解説していくので、ぜひ参考にしてくださいね!
【執筆・監修者】田口 耕平
日本接着歯学会
日本口腔インプラント学会
日本補綴歯科学会・専門医
国際口腔インプラント学会・認定医
日本糖尿病協会登録歯科医
北戸田COCO歯科 院長
【詳しい経歴はこちら】
1:インプラントが歯周病になりやすい3つの原因
インプラントが天然歯に比べて歯周病になりやすい原因は、
- 歯根膜がなく細菌感染しやすい
- 定期メンテナンスや日々のお手入れ不足
- 歯周病を治していない状態でインプラント治療を受けた
の3つです。
どういうことか、それぞれ解説していきますね。
1-1:歯根膜がなく細菌感染しやすい
インプラントが歯周病になりやすい1つ目の原因が、「歯根膜(しこんまく)がなく細菌感染しやすい」という点です。
天然歯(自分の歯)には、アゴ骨と歯の根の間に歯根膜があります。
インプラントには歯根膜がないため、血液供給が少なくなって細菌への抵抗力が弱くなり、天然歯よりも歯周病になりやすくなってしまうのです。
1-2:定期メンテナンスや日々のお手入れ不足
次に、インプラントが歯周病になりやすい原因が「定期メンテナンスや日々のお手入れ不足」になります。
なぜなら、「歯の汚れ」=「細菌の塊」になり、お口のお手入れができていないと細菌感染を引き起こして歯周病になってしまうからです。
もちろん天然歯もメンテナンス(歯医者での定期検診)や日々のお手入れが不足していれば、当然歯周病になります。
しかし、インプラントは先程紹介した歯根膜がない影響で、より歯周病菌に侵される速度が約10倍速いのです。
そういった意味で、天然歯よりもインプラントは歯周病になりやすいと言えます。
1-3:歯周病を治していない状態でインプラント治療を受けた
3つ目は「歯周病を治していない状態でインプラント治療を受けた」ケースです。
こちらは患者さまというよりも、インプラント治療をする歯科医師に問題があります。
インプラント部位または隣の歯が歯周病の状態で治療を進めると、インプラント周囲炎になる確率が非常に高くなってしまうのです。
インプラント周囲炎については、この後にも詳しく説明しますが、インプラントの周囲組織で炎症が起こる病気です。
歯周病と同じ細菌感染症の一種で、進行してしまうとインプラントがグラグラ揺れたり外れたりする原因になります。
そのため、通常はインプラント治療の前に歯周病治療を終わらせることが優先されます。
では次に、もし歯周病になりやすいインプラントの管理を放置してしまったらどうなるかについて紹介していきます。
2:歯周病になりやすいインプラントの管理を放置するリスク
歯周病になりやすいインプラントの管理を放置してしまうと、
- インプラント周囲粘膜炎:炎症が起きる
- インプラント周囲炎:インプラントの動揺や脱落
といった2つの症状が悪化する危険性が高まります。
それぞれどんな症状が出るのか、詳しく紹介しますね!
2-1:インプラント周囲粘膜炎:炎症が起きる
インプラント周囲炎になる前の状態が、「インプラント周囲粘膜炎」です。
名前の通り、インプラントの周囲の粘膜が炎症を起こし、
- 歯肉が腫れたり赤みを帯びる
- 歯肉から出血
などの症状が出ます。
ただし、痛みや違和感を感じにくく自覚症状が出ないため、知らない間に症状が進行してしまうケースが多いです。
2-2:インプラント周囲炎:インプラントの動揺や脱落
インプラント周囲粘膜炎が進行すると、炎症が拡大して「インプラント周囲炎」になり、
- インプラント部位から膿が出る
- 歯肉が退縮する
- インプラントがぐらつく
などの症状が出ます。
進行が進んでしまうと、インプラントが取れてしまうケースも多いです。
インプラントを長く使うためにも、インプラント周囲炎にならないようにしっかり予防しましょう。
では次に、どのようにすればインプラント周囲炎を予防できるかについてお話していきます。
3:インプラント周囲炎を予防する4つの予防法
インプラント周囲炎を予防する代表的な方法は、
- 毎日の歯磨きを徹底する
- 歯医者の定期メンテナンス
- 禁煙
- 歯ぎしりが強い方はナイトガード
の4つになります。
どういうことか、詳しく説明しますね!
3-1:毎日の歯磨きを徹底する
インプラント周囲炎を予防する上で1番目に大切なのは、「毎日の歯磨きを徹底すること」になります。
なぜなら、ここまで説明したようにインプラント周囲炎(歯周病)の原因は、「細菌感染=歯の汚れ」だからです。
毎日正しい方法でインプラント部位を含むお口の清掃をすることは、インプラントだけでなく天然歯(自分の歯)を守ることにも繋がります。
せっかく入れたインプラントを長く使い続けるためにも、日々のお手入れに積極的に取り組みましょう!
3-2:歯医者の定期メンテナンス
2つ目に重要な予防法が、「歯医者の定期メンテナンス(定期検診)」を受けることです。
インプラントの定期メンテナンスでは主に、歯科のプロが
- レントゲン検査
- 歯肉の腫れや排膿の有無のチェック
- インプラント体のぐらつきチェック
- お口の中の清掃状態の確認
- インプラント部位を含む歯磨き指導
- クリーニング
といった検査や処置を行います。
自覚症状が出にくい「インプラント周囲粘膜炎」や「インプラント周囲炎」になっていないかも診てもらえるので、状態が悪化する前に食い止められます。
また、インプラント治療後の保証適用の条件に「定期検診に行くこと」を入れている歯医者も多いです。
万が一のトラブルが合ったときにも保証を使えるように、定期メンテナンスにはしっかり通うようにしましょう。
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3-3:禁煙
インプラント周囲炎を予防する3つ目の方法が、「禁煙」です。
というのも、タバコ(喫煙)とインプラントの相性は非常に悪いです。
喫煙者のインプラント治療の失敗率は2倍・術後トラブルは7倍になるという調査結果も出ています。
実際に日本口腔インプラント学会が発行している治療指針にも、喫煙がインプラント周囲炎や歯周病のリスクを上げることが明記されているのです。
上記の点から、インプラント周囲炎を予防するためには禁煙するのが非常に重要なポイントになっています。
3-4:歯ぎしりが強い方はナイトガード
最後にインプラント周囲炎を予防する際に、重要なポイントが「歯ぎしりや食いしばりによる負担を減らしてくれるナイトガードをつける」です。
ただし、通常の歯ぎしりレベルであれば、インプラント周囲炎が進行する心配はあまりありません。
問題なのは、歯科医師などから指摘を受けるような「病的な歯ぎしり(食いしばり)」をしている場合です。
病的な歯ぎしりをしている場合には、歯ぎしり(食いしばり)による過度な力がインプラント周囲炎を進行させてしまうケースがあります。
今まで歯科医師や家族等から歯ぎしりや食いしばりを指摘された経験がある方は、ナイトガードをつけてインプラントや他の天然歯を守っていきましょう。
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4:インプラントが歯周病になりやすい原因&予防法の結論
では最後に、インプラントが歯周病になりやすい原因や予防法の重要なポイントをおさらいしていきます。
インプラントが天然歯に比べて歯周病になりやすい原因は、
・歯根膜がなく細菌感染しやすい
・定期メンテナンスや日々のお手入れ不足
・歯周病を治していない状態でインプラント治療を受けた
の3つでした。
上記の状態でインプラントの管理を放置すると、
・インプラント周囲粘膜炎
・インプラント周囲炎
になり、最悪の場合インプラントが取れてしまう危険性があります。
インプラントをより長く使うためにも、
・毎日の歯磨きを徹底する
・歯医者の定期メンテナンス
・禁煙
・歯ぎしりが強い方はナイトガード
の4つの予防法を実践していきましょう!
以上、今回はインプラントと歯周病についてお話しました。
現時点で歯周病を指摘されたことがある方でも、しっかりと治療を行えばインプラントを入れられるケースも多いです。
インプラントを大切にすることは、結果的に天然歯(自分の歯)を大切にすることにも繋がります。
インプラント周囲炎(歯周病)への不安が強い方は、ぜひお気軽にお問い合わせくださいね!