歯を失ったときの治療の選択肢として、”入れ歯”がありますが、
噛むときに痛くて、困っている。
結局は、食事中に入れ歯を使っていない。
など、入れ歯と食事に関連したお悩みは耐えません。
そして、噛む行為はただ単純に食事が楽しめるか否か以外にも、健康問題に大きく影響を及ぼします。
そこで本記事では、大学病院で補綴(人工歯)を専門に学んだ歯科医師・田口が「入れ歯での食事に困っている方に役立つ情報」をまとめて紹介していきます。
本記事を読めば、入れ歯の食事問題にどう対処すればいいかわかるようになりますよ!
【執筆・監修者】田口 耕平
日本接着歯学会
日本口腔インプラント学会
日本補綴歯科学会・専門医
国際口腔インプラント学会・認定医
日本糖尿病協会登録歯科医
北戸田COCO歯科 院長
【詳しい経歴はこちら】
1:入れ歯だと食事が大変になる理由
入れ歯だと食事が大変になる理由は、
- 入れ歯が合わなくて噛むときに痛みを感じる
- 自分の歯よりも噛む力が弱まる
- 温度や食感を感じにくくなり、食事が楽しめなくなる
などがあります。
入れ歯というのは、自分の歯茎の上に乗っているだけなので、天然歯(自分の歯)に比べてどうしても使用感が著しく落ちてしまうのです。
最初はピッタリだった入れ歯も、歯茎が痩せてくると合わなくなってしまうことも珍しくありません。
特に、入れ歯の範囲が広がると上記の傾向が強く出やすいでしょう。
とはいえ、せっかく作った入れ歯を外して食事をする場合には、この次に紹介するようなデメリットが発生するので注意してください。
2:入れ歯を外して食事をする3つのデメリット
入れ歯を外して食事をするデメリットは、
①誤嚥リスクが高まる
②窒息リスクが高まる
③栄養不足になる
の3つです。
それぞれ、どういうことか解説していきますね。
2-1:誤嚥リスクが高まる
入れ歯を外して食事をする1つ目のデメリットは、「嚥下機能が低下して誤嚥リスクが高まる」です。
柔らかいものであれば、入れ歯を外しても食事はできます。
しかし、しっかり噛まずに柔らかいものばかり食べる生活をしていると、嚥下機能(飲み込む力)が低下して誤嚥性肺炎などを発症するリスクが高まります。
そのため、”食事中に入れ歯を使うのが辛いから外す”という選択を安易にするのはおすすめできません。
記事後半で紹介する対処法を実践して、しっかり噛める状態を整えておくのが、健康に年を重ねるポイントになるでしょう。
2-2:窒息リスクが高まる
入れ歯を外して食事をする2つ目のデメリットは、「認知機能が低下すると窒息リスクが高まる」です。
歯を失ったり入れ歯をしっかり使っていないと、咀嚼による脳への刺激が少なくなり認知症になりやすくなる可能性があることが、様々な研究からわかっています。※
つまり、噛む行為は人間にとって広い意味で健康を維持する重要なポイントになるのです。
認知症が進んでしまうと、飲み込むことを忘れて口の中に食べ物を詰め込んでしまうなどの窒息リスクが高まるので注意したほうが良いでしょう。
2-3:栄養不足になる
入れ歯を外して食事をする3つ目のデメリットは、「食べられる食材が減って栄養不足になる」です。
入れ歯はそもそも自分の歯に比べると、約60~90%も噛む力が落ちます。
そのため、そこでさらに入れ歯を外してしまうと、噛む力がほとんどなくなり食べられる食材が減って栄養不足になることも多いのです。
痛い・使いにくいという理由で入れ歯を外すと、体全体の健康を損なうケースも多いので注意しましょう。
では次に、食事中の入れ歯の大変さを軽減する対処法を紹介していきます。
3:入れ歯で食事するのが大変なときの4つの対処法
入れ歯で食事をするのが大変なときは、
①入れ歯の調整・修理をする
②新しい入れ歯を作る
③調理方法を工夫する
④インプラントを入れる
の4つの対処法を検討してみるのがおすすめです。
それぞれの注意点などについて、詳しくご説明していきますね!
3-1:入れ歯の調整・修理をする
入れ歯で食事をするのが大変なときの1つ目の対処法は、「入れ歯の調整・修理をする」です。
歯茎が痩せたり、噛み合わせが変わったりすると、最初はピッタリだった入れ歯も段々と合わなくなり痛みが発生します。
そのため、お口全体の定期検診の際でも大丈夫なので、担当医に痛みがあることを伝えて入れ歯の調整や修理をお願いしましょう。
基本的に、入れ歯は1度作っておしまいではありません。
お口の中の状態に合わせて調整・修理しながら使う必要があると覚えておきましょう。
3-2:新しい入れ歯を作る
入れ歯で食事をするのが大変なときの2つ目の対処法は、「新しい入れ歯を作る」です。
修理や調整では対応しきれなくなった場合に、有効になります。
ただし、保険適用内でつくった入れ歯を新しく作り直せるのは”半年後”といった法律上の決まりがあるので注意してください。
このルールは、他の歯科医院へ転院しても変わりません。
また、仮に入れ歯を無くした場合でも作ってから半年後までは、保険の入れ歯を作り直せません。
もちろん、自費診療の入れ歯を作り直す場合には、制限はなくいつでも新しい入れ歯を作れます。
自費診療の入れ歯は、保険診療の入れ歯よりも使用感が改善されているものが多いです。
自費診療の入れ歯については、以下記事で詳しく少空きしているので参考にしてくださいね!
3-3:調理方法を工夫する
入れ歯で食事をするのが大変なときの3つ目の対処法は、「調理方法を工夫する」です。
具体的には、
- 食材の大きさを小さめにする
- 隠し包丁を入れて、噛みやすくする
- よく煮込んで食材を柔らかくする
- 肉の筋を切る
などの調理法が有効です。
ただし、野菜などをみじん切りにするのは逆効果なので注意してください。
- 入れ歯と歯茎の間に食材が入り込んで痛くなる
- 口の中でまとまりにくく飲み込みにくくなる
など、入れ歯で食事をする際に問題が発生するケースが多いです。
入れ歯での食事にご不安がある場合には、遠慮なくスタッフまでお声がけください!
おすすめの調理方法などについて丁寧にご説明いたします。
3-4:インプラントを入れる
入れ歯で食事をするのが大変なときの4つ目の対処法は、「インプラントを入れる」です。
インプラントは入れ歯とは異なり、固定式になります。
そのため、自分の歯にかなり近い感覚で使うことが可能です。
入れ歯による食事問題の根本的な原因を無くせるでしょう。
▼治療法別の噛む力
お口の中の状態 | 噛む力 |
---|---|
すべて自分の歯 | 100% |
インプラント | 70~85% |
部分入れ歯 | 30~40% |
総入れ歯 | 10~20% |
ただし、もちろん使用感や審美面が優れているインプラントにも
- 保険適用の治療よりも費用がかかる
- 手術が必要
などのデメリットもあります。
入れ歯からインプラントにする場合には、それぞれの治療法をよく比較すると納得のいく治療の選択がしやすいでしょう!
4:入れ歯と食事の結論
それでは最後に、入れ歯と食事について重要なポイントを簡単におさらいしていきます。
入れ歯だと食事が大変になる理由は、
・入れ歯が合わなくて噛むときに痛みを感じる
・自分の歯よりも噛む力が弱まる
・温度や食感を感じにくくなり、食事が楽しめなくなる
などがあります。
ただし、上記の理由から安易に食事中に入れ歯を外す生活を続けてしまうと、
①誤嚥リスクが高まる
②窒息リスクが高まる
③栄養不足になる
といった3つのデメリットが発生する可能性が高いです。
入れ歯で食事をするのが大変な場合には、
①入れ歯の調整・修理をする
②調理方法を工夫する
③新しい入れ歯を作る
④インプラントを入れる
の4つの対処法を試してみると、改善される可能性が高くなります。
以上、今回は入れ歯での食事が大変な方に役立つ情報を紹介しました。
当院は、入れ歯・インプラントなど様々な治療法に精通した歯科医師がおります。
入れ歯での食事が大変な場合にも、お役に立てる可能性が高いです。
悩まれている場合には、ぜひお気軽にご相談ください!