「差し歯とインプラントってそもそも、何が違うの?」
そんな疑問をお持ちの方。
たしかに、差し歯とインプラントの違いって一見わかりにくいですよね。
でも、実は差し歯とインプラントには明確な違いがあります。
そこで本記事では、日本口腔インプラント学会所属の歯科医師が「インプラントと差し歯の違い」を中心に費用や治療期間などを詳しくご紹介していきます。
どちらの治療法が良いのかわからなくなってしまった方は、ぜひ参考にしてください!
本記事で紹介するのは、あくまでも”目安”です。
患者さまによって費用や治療期間はそれぞれ異なりますので、詳細は必ず担当医に確認しましょう。
【執筆・監修者】田口 耕平
北戸田COCO歯科 院長
【経歴はこちら】
1:インプラントと差し歯の違いは歯の根があるか否か
インプラントと差し歯の違いは、歯の根があるか否かです。
具体的には、
● 差し歯=歯の根(天然歯)+人工歯
● インプラント=すべて人工歯
になります。
つまり、
→ 差し歯は抜歯前(歯の根が使えるとき)
→ インプラントは抜歯後(歯の根が使えないとき)
にする治療になるのです。
歯の根っこをまだ使える差し歯のほうが、重症度としては軽いと覚えておきましょう。
2:インプラントと差し歯、どちら治療法を選べばいいの?
先述したように、
● 差し歯は抜歯前(歯の根が使えるとき)
● インプラントは抜歯後(歯の根が使えないとき)
にする治療法です。
ですので、歯の根の有無で選択できる治療法が異なります。
たまに「抜歯後だけど、差し歯を入れてもらえますか?」というご相談もあります。
しかし、その場合は差し歯ではなくこの次に紹介しているインプラントを含む3つの治療法の中から選んでいただくのが一般的です。
2-1:抜歯後の治療法はブリッジ・入れ歯・インプラント
基本的に天然歯(自分の歯)を完全に失った後の治療法は、
● ブリッジ
● 入れ歯
● インプラント
の3つに分類されます。
それぞれの違いは以下のとおりです。
ブリッジ | 入れ歯 | インプラント | |
イメージ | |||
治療期間 | 約2週間 | 約1ヶ月 ~2ヶ月 |
約4ヶ月 ~5ヶ月※1 |
保険相場※2 | 約1万円 ~2万円 |
約5千円 |
- |
自費相場 | 約5万円 ~15万円 |
約15万円 ~80万円 |
約20万円 |
※1顎の骨が少ない場合には、治療期間がさらに3~9ヶ月前後のびます。
※2保険は3割負担の場合の料金です。
※3公益社団法人日本口腔インプラント学会で2015年に調査されたデータです。2022年時点では、オプションを含む総額で1本あたり約30万~40万円かかるケースが多いです。
詳しい説明は、こちらをご覧ください
では次に、インプラントと差し歯の治療期間や流れを比較していきます。
3:インプラントと差し歯の治療期間や流れを比較
インプラントと差し歯の治療期間は、以下のとおりです。
☑ 差し歯:約1~2ヶ月
☑ 骨があるインプラント:約4~5ヶ月
☑ 骨が少ないインプラント:約7~13ヶ月
基本的に、差し歯は歯の根の治療に時間がかかるケースが多いです。
一方で、インプラントはインプラント体(人工歯根)とあご骨がくっつくのを待つ期間が長くなります。
詳しい治療の流れは以下のとおりです。
3-1:差し歯治療の流れ
差し歯治療の基本的な流れは以下のとおりです。(治療法によっては、流れが異なるケースがあります)
①初診・カウンセリング
②診断や検査
③虫歯の部分をすべて削る
④歯の根の治療を行う※
⑤土台が入るように形を整える
⑥土台をいれる
⑦被せもの(上部構造)作成と装着
⑧定期メンテナンスへ移行
※重症度に合わせて、通院回数が大きく異なります。
3-2:インプラント治療の流れ
インプラント治療の基本的な流れは以下のとおりです。(治療法によっては、流れが異なるケースがあります)
①初診・カウンセリング
②診断や検査
③インプラント体※1を埋め込む(手術)※2
④インプラント体※1とあご骨が結合するのを待つ※3
⑤被せもの(上部構造)作成と装着
⑥定期メンテナンスへ移行
※1:インプラント体=人工歯根
※2:治療法によっては、2回手術が必要になります
※3:インプラント体とあご骨が定着するまでには、通常約4~5ヶ月かかるケースが多いです
4:インプラントと差し歯の見た目や値段(費用)の違い
インプラントと差し歯は、以下の点で見た目や値段(費用)が大きく異なります。
☑ 差し歯:保険または自費診療を選択可
☑ インプラント:基本的に自費診療のみ
見た目は、自費の差し歯とインプラントであれば、天然歯(自分の歯)と変わらない美しく自然な仕上がりにすることが可能でしょう。
ただし、保険の差し歯を選んだ場合には、自費の差し歯やインプラントに比べて見た目が大きく劣ります。
前歯部(前から数えて5番目まで)は、歯の全面またはすべてが白色のプラスチックでできた歯を使用します。
経年劣化・着色しやすく、他の天然歯との違いが悪目立ちしやすいです。
奥歯(6番目以降)は基本的に銀歯を使用するので、自然な仕上がりにするのは厳しいでしょう。
費用の違いについては、この後にそれぞれ解説していきます。
4-1:差し歯は保険と自費で値段(費用)が大きく異なる
差し歯は、保険と自費で値段(費用)に大きな開きがあります。
● 保険差し歯(1本):約3千円~1万円※1
● 自費差し歯(1本):約4~20万円※2
※1:3割負担の場合
※2:選ぶ素材や治療箇所によって費用が大きく異なる
保険の差し歯は、国に費用の一部を負担してもらえるので治療費を安く済ませられます。
しかし、最低限の機能回復にとどまる治療法しか選択できません。
一方で自費の差し歯は、治療費がすべて自己負担になります。
その代わりに、患者さま一人ひとりに合わせた治療法や材料を制限なく選べるので、耐久性や審美性に優れた精度の高い治療を受けられるのです。
患者さまの求める「治療の目的(ゴール)」によって選択する治療法も変わってくると思いますので、詳しくは担当医に相談しましょう。
4-2:インプラントは基本的には自費治療のみ
インプラント治療は、
● 生まれつきあご骨の1/3以上が連続していないまたは形成不全
● 病気や事故などやむを得ない事情で、大きなあごの骨を失った
場合を除いて、基本的には自費治療になります。
自費治療の場合はインプラント1本あたり平均で、「約20~40万円」かかるケースが多いでしょう。
インプラントの費用について、もっと詳しく知りたい方はこちらをどうぞ!
5:インプラントと差し歯の寿命の違い
インプラントと差し歯の寿命は、歯の根やあご骨の状態によって大きく左右されます。
特に差し歯は、保険と自費で寿命が大きく異なるでしょう。
詳しい年数は、この後に一つひとつ紹介していきます。
5-1:差し歯は保険で約5~8年、自費で約10~20年
差し歯の平均寿命は、以下のとおりです。
● 保険差し歯:約5~8年
● 自費差し歯:約10~20年
基本的には、自費の差し歯を選んだほうが長持ちするケースが多いでしょう。
ただし、自費診療を選んでも根の状態やかみ合わせが悪い場合には、寿命を延ばすのが難しくなります。
どの部位を治療するかよっても寿命が大きく異なるので、治療法を選ぶ際は担当医とよく相談するのがオススメでしょう。
5-2:インプラントは抜歯後の治療法の中で1番寿命が長い
インプラントは、約9割の方が約10~15年たっても状態を保持しているといった結果※が出ています。
実際に他の抜歯後の治療法と比べても、1番長持ちすることがわかっているのです。
インプラント |
ブリッジ 約7年~8年 |
入れ歯 約4年~5年 |
詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
※出典:厚生労働省委託事業「歯科保健医療情報収集等事業」歯科インプラント治療のための Q&A
6:結論:インプラントと差し歯の違い
それでは最後に、インプラントと差し歯の違いについて簡単におさらいしていきます。
インプラントと差し歯の違いは、歯の根があるか否かです。
どちらの治療法を選べばいいか迷ったら、
☑差し歯は抜歯前(歯の根が使えるとき)
☑インプラントは抜歯後(歯の根が使えないとき)
に選択する治療法だということを思い出しましょう!
治療期間は、
☑差し歯:約1~2ヶ月
☑骨があるインプラント:約4~5ヶ月
☑骨が少ないインプラント:約7~13ヶ月
治療の流れは、
☑差し歯:根の治療がメイン
☑インプラント:あご骨とインプラント体の結合を待つ期間がメイン
見た目や治療費の違いは、
☑保険差し歯:経年劣化・変色しやすい(約3千円~1万円)
☑自費差し歯:天然歯と変わらない自然な仕上がりにできる(約4~20万円)
☑インプラント:天然歯と変わらない自然な仕上がりにできる(約20~40万円)
寿命は、
☑保険差し歯:約5~8年
☑自費差し歯:約10~20年
☑インプラント:約9割が10~15年以上持つ
になります。
以上、インプラントと差し歯の違いでした!
差し歯でいけるか否かは、検査をしてみないと歯科医師でも判断が難しいです。
自分はどんな治療法を選べるのか知りたい場合は、ぜひ直接ご相談くださいね