奥歯を失ったとき、
- 入れ歯
- ブリッジ
- インプラント
の3つの治療法を提案されるケースが多いと思います。
その際に、
奥歯にインプラントを入れることで、デメリットは発生しないのかな?
奥歯は人からあまり見えないのに、わざわざインプラントを選ぶ必要はあるのかな?
といった点が気になることがありますよね。
そこで本記事では、日本口腔インプラント学会所属の歯科医師・田口が、
①奥歯にインプラントを入れるメリット
②奥歯にインプラントを入れるデメリット
③奥歯にインプラントを入れる際の歯医者の選び方
④奥歯とインプラントに関連するよくある質問
の順に、奥歯にインプラントを入れることを検討している方に役立つ情報をまとめて紹介していきます。
では、さっそく本文にうつっていきましょう!
【執筆・監修者】田口 耕平
日本接着歯学会
日本口腔インプラント学会
日本補綴歯科学会・専門医
国際口腔インプラント学会・認定医
日本糖尿病協会登録歯科医
北戸田COCO歯科 院長
【詳しい経歴はこちら】
1:インプラントを奥歯に入れる6つのメリット
インプラントを奥歯に入れるメリットは、
①自分の歯のようにしっかり噛める
②入れ歯のような違和感や痛みがない
③隣接する奥歯に負担をかけずに済む
④噛み合わせのバランスが整う
⑤骨吸収の進行を抑えやすくなる
⑥発音しやすくなる
の6つです。
それぞれどういうことか、お話していきますね。
1-1:自分の歯のようにしっかり噛める
インプラントを奥歯に入れる1つ目のメリットは、「自分の歯のようにしっかり噛める」です。
奥歯には、前歯で大きさを調整した食べ物を
- 細かくする
- すり潰す
という役割があります。
もちろん入れ歯やブリッジでもこの役割を果たすことは可能ですが、インプラントが大きく異なるのは自立式であること。
入れ歯やブリッジが歯を失った部位の両隣の歯の力を借りて噛む力を補うのに対し、インプラントは顎骨に人工歯根を埋め込むため、自分の歯のように利用できます。
特に入れ歯との違いは顕著で、約60%〜80%も噛む力に差がつくと言われているのです。
▼治療法別の噛む力の目安
お口の中の状態 | 噛む力 |
---|---|
すべて自分の歯 | 100% |
インプラント | 70~85% |
ブリッジ | 60~70% |
部分入れ歯 | 30~40% |
総入れ歯 | 10~20% |
上記の点から、年齢を重ねても食材の硬さを気にせず食事を楽しみたい方にとって、奥歯にインプラントを入れるメリットは大きいと言えるでしょう!
1-2:入れ歯のような違和感や痛みがない
インプラントを奥歯に入れる2つ目のメリットは、「入れ歯のような違和感や痛みがない」です。
入れ歯は
- 名医が入れたもの
- 高価な自費の入れ歯
でも自分の歯と同じような感覚では使えません。
インプラントやブリッジなど固定式の歯に比べると、取り外し式の入れ歯は安定感がないため
- 装着時に強い違和感を感じたり
- 食事のときに痛みを感じたり
しやすくなっているのです。
特に奥歯は噛む力が強くかかる部位のため、痛みや違和感を感じやすくなっています。
上記の点から、違和感や痛みを少しでも少なくしたい場合には、インプラントやブリッジを選んだほうがメリットが大きいです。
1-3:隣接する奥歯に負担をかけずに済む
インプラントを奥歯に入れる3つ目のメリットは、「隣接する奥歯に負担をかけずに済む」です。
インプラントは、歯を失った部分に人工歯根を埋め込む自立した人工歯です。
両隣の歯に負担をかけないため、健康な歯の寿命を縮めることがなく、お口全体の健康を長期目線で考えた際にメリットが大きい治療法になっています。
一方で、
- ブリッジ:両隣の歯を削り、上から人工歯を被せて歯がない部分を補う
- 入れ歯:両隣の歯の力を借りて、歯がない部位の負担を補う
ため、インプラント以外の治療法は、本来は問題がないはずの2本の歯の寿命を縮めてしまいます。
結果的に、歯を失う範囲がどんどん広がり、自分の歯を守ることが難しくなってしまうのです。
特に、歯は噛む力がかかりやすい奥歯から失われていくケースが多いです。
そのため、奥歯に自立式のインプラントを入れて、健康な両隣の歯を守るメリットは大きいと言えるでしょう!
1-4:噛み合わせのバランスが整う
インプラントを奥歯に入れる4つ目のメリットは、「噛み合わせのバランスが整う」です。
奥歯は、噛み合わせを安定させる重要な役割も担っています。
そのため、歯にかけられる力が偏ってしまうと、噛み合わせのバランスが崩れる可能性があるのです。
『自分の歯のようにしっかり噛める』でも紹介したように、ブリッジや入れ歯はインプラントと比べると噛む力が落ちてしまいます。
つまり、噛み合わせのバランスが崩れないようにするためには、できるだけ天然歯に近いインプラントを奥歯に入れたほうがメリットが大きいのです。
1-5:骨吸収の進行を抑えやすくなる
インプラントを奥歯に入れる5つ目のメリットは、「骨吸収の進行を抑えやすくなる」です。
インプラントは顎骨に人工歯根を埋め込むため、噛んだときの刺激が骨にしっかり伝わり、骨吸収を抑えられます。
特に奥歯は噛む力がかかりやすい部位なので、土台となる顎骨を守るという意味でも、インプラントはメリットが大きい治療法です。
一方で、入れ歯は歯根がないことから、骨に刺激がいかず骨吸収(骨が溶けてなくなる)が急速に進行します。
また、ブリッジであっても、歯が連結している関係で歯の動きが通常よりも少なくなり、骨吸収が進んでしまうのです。
つまり、入れ歯やブリッジの場合、歯を支える土台となる顎骨がどんどん少なくなります。
顎骨が少なくなると、
- 歯ぐきが退縮したり
- 歯がグラグラしたり
- 最終的に歯が支えられなくなって抜け落ちたり
などデメリットが、非常に大きいのです。
しかも、その被害は隣の歯を支えている骨にも広がっていくため、骨吸収を抑える目的でインプラントを入れるメリットは大きい言えます。
1-6:発音しやすくなる
インプラントを奥歯に入れる6つ目のメリットは、「発音しやすくなる」です。
奥歯がない状態だと、空気が抜けてしまい「は行」や「ら行」を発声しにくくなります。
また、入れ歯をしても取り外し式のため、会話中にずれたり外れたりして喋りにくくなってしまうケースがあるのです。
一方でインプラントやブリッジは固定式のため、自分の歯と同じように話せます。
外れたりずれたりする心配がないでしょう。
では次に、奥歯にインプラントを入れるデメリットを3つ紹介していきます。
2:奥歯にインプラントを入れる3つのデメリット
奥歯にインプラントを入れるデメリットは、
①保険適用の治療に比べると高額
②保険適用の治療に比べると治療期間が長い
③骨を増やす外科手術が必要になる可能性がある
の3つです。
それぞれどういうことか、お話していきますね!
2-1:保険適用の治療に比べると高額
奥歯にインプラントを入れる1つ目のデメリットは、「保険適用の治療に比べると高額」な点です。
歯を失ったときに選べる治療法の中で、ブリッジや入れ歯は保険適用のため安価な価格で治療を受けられます。
一方で、インプラントは自費診療になるため、治療費に大きな差がつくのです。
▼治療法別の費用目安
ブリッジ | 入れ歯 | インプラント | |
---|---|---|---|
イメージ | |||
治療費の相場 | 約1万~2万円 | 約5千円~2万円 | 約20万~40万円(1本) |
※1:ブリッジ・入れ歯は3割負担の場合の料金です。
※2:公益社団法人日本口腔インプラント学会の2015年の相場データです。2022年時点では、オプションを含む総額で1本あたり約30万~40万円かかるケースが多くなっています。
※3:上記はあくまでも目安です。患者さまのお口の中の状態によって大きく異なるケースがあります。
ただし、保険適用の治療は国で定められている“必要最低限の健康を維持する治療”です。
逆に言えば、インプラントのように、
- より噛める
- より美しい
- より耐久性が高い
を実現できる高品質な素材や技術は法律上使えません。
つまり、奥歯の治療法を選ぶ際は、わかりやすい値段だけでなく長期的なコスパで費用のお得度を判断するのがおすすめでしょう。
2-2:保険適用の治療に比べると治療期間が長い
奥歯にインプラントを入れる2つ目のデメリットは、「保険適用の治療に比べると治療期間が長い」点です。
というのも、インプラントは安定性を上げるために、
- 土台となる顎骨と
- 人工歯根が結合する
のを待つ期間が必要になります。
そのため、他の治療法と比べたときに、治療期間に以下のような差が出てくるのです。
▼治療法別の治療期間の目安
ブリッジ | 入れ歯 | インプラント | |
---|---|---|---|
イメージ | |||
治療費の相場 | 約2週間 | 約1ヶ月~2ヶ月 | 約4ヶ月~5ヶ月※1 |
平均寿命 | 約7年~8年 | 約4年~5年 | 約10年~15年以上 |
※1:顎の骨が少ない場合には、治療期間がさらに3ヶ月~9ヶ月前後のびます。
※2:上記はあくまでも目安です。患者さまのお口の中の状態によって大きく異なるケースがあります。
ただし、時間をかけて固定する分、他の治療法と比べてインプラントは寿命が長いです。
メンテナンス等でしっかり管理していれば、40年以上長持ちするケースもあります。
2-3:骨を増やす外科手術が必要になる可能性がある
奥歯にインプラントを入れる3つ目のデメリットは、「骨を増やす外科手術が必要になる可能性がある」点です。
というのも、
- 骨が薄い
- 骨が足りない
方は、人工歯根を顎骨に埋め込めないからです。
そういった場合には、インプラントを埋め込む手術の他に、
- ソケットリフト
- サイナスリフト
- GBR
- ソケットプリザベーション
- CTG
- スプリットクレスト
- エクストルージョン
などの外科手術を追加で行うことになりますが、治療期間が伸びたり治療費が多くかかってしまうケースがあります。
また、骨を増やす手術には高度な技術が必要とされるため、骨を増やす処置ができる歯科医師を探す必要があるでしょう。
骨を増やす手術が必要になるか否かは、詳しく検査してみないとわかりません。
気になる方はこの後に紹介する歯医者の選び方を参考に、一度カウンセリングに行ってみましょう!
3:奥歯にインプラントを入れる際の歯医者の選び方5選
奥歯にインプラントを入れる際の歯医者の選び方で重要なポイントは、
①CT診断が可能
②骨造成などの外科手術にも対応
③メリットだけでなくデメリットもしっかり説明してくれる
④インプラント以外の治療の選択肢も豊富
⑤インプラントを入れた後のアフターフォローも手厚い
の5つです。
一つひとつどういうことか、お話していきますね!
3-1:CT診断が可能
奥歯にインプラントを入れる際の歯医者の選び方1つ目は、「CT診断が可能」です。
CT診断とは、通常のレントゲン(2次元の画像診断)とは異なり、
- 骨の厚みや神経
- 血管の状態
- 噛み合わせ
などを3次元で(立体的に)検査できる撮影機器を用いた診断方法のことです。
患者さまにとって最適な治療計画を立てるために、この3DCT撮影機器での診断が必要になります。
3-2:骨造成などの外科手術にも対応
奥歯にインプラントを入れる際の歯医者の選び方2つ目は、「骨造成などの外科手術にも対応している」です。
『骨を増やす外科手術が必要になる可能性がある』でもお伝えしたとおり、場合によっては骨を増やす手術(骨造成など)が必要になります。
しかし、骨を増やす手術は難易度が高く、歯科医師であっても誰でも施術ができるわけではないのです。
そのため、カウンセリングを受けに行く際には、そもそも骨造成などの外科手術にも対応できる歯科医師か否かを、歯医者HPや予約時の電話で事前確認しておくのがおすすめです。
ちなみに当院の骨を増やす手術については、以下のページでご確認いただけます。
3-3:メリットだけでなくデメリットもしっかり説明してくれる
奥歯にインプラントを入れる際の歯医者の選び方3つ目は、「メリットだけでなくデメリットもしっかり説明してくれる」です。
ここまで説明したとおり、インプラントにはメリットだけでなくデメリットも存在します。
そして、それは他の治療法も同じです。
つまり、患者さまの希望に近い治療法を選ぶためには、治療の良いところだけでなく悪いところもしっかり説明してくれる歯科医師が必要になります。
もしカウンセリングを受けてみて、長所・短所の話のバランスに違和感を感じた場合には、セカンドオピニオンを利用してさまざまな歯科医師の話を聞いてみましょう。
複数の歯科医師の話を比較することで、総合的に判断できるようになり、納得のいく治療を選びやすくなります。
3-4:インプラント以外の治療の選択肢も豊富
奥歯にインプラントを入れる際の歯医者の選び方4つ目は、「インプラント以外の治療の選択肢も豊富」です。
歯を失ったときに選べる代表的な治療法は、
①ブリッジ
②入れ歯
③インプラント
の3つがあげられるケースが多いですが、実は他にも
- 歯牙移植
- 接着ブリッジ
などの治療の選択肢があります。
ただし、この2つの治療法は、治療難易度が高く適応範囲も限定されることからどこの歯医者でも受けられる治療法ではありません。
そのため、奥歯の治療の選択肢を広げたい方は、事前に歯医者HPや予約時の電話で「歯牙移植」や「接着ブリッジ」の治療を受けられるかを確認したほうが良いでしょう。
ちなみに、当院のインプラント以外の治療法については以下ページで詳しく説明しています。
3-5:インプラントを入れた後のアフターフォローも手厚い
奥歯にインプラントを入れる際の歯医者の選び方5つ目は、「インプラントを入れた後のアフターフォローも手厚い」です。
インプラントを入れた後のアフターフォローとは、
- インプラントの保証
- インプラント治療後のメンテナンス
のことで、それぞれチェックポイントが異なります。
インプラント保証については、
①再治療時に保証が適用される範囲
②いつから保証が適用になるか
③保証費用・免責金額・限度額
④保証適用の条件
⑤保証の対応回数
の5つをチェックするのがおすすめです。
メンテナンスについては、
①メンテナンスでどこまでやってくれるのか
②メンテナンスにいくらかかるのか
③歯科衛生士は担当制なのか
の3つを確認するのがおすすめでしょう。
ちなみに、当院の保証・メンテナンスについては以下ページをご覧ください。
>>北戸田COCO歯科の保証について
>>北戸田COCO歯科のメンテナンスについて
4:奥歯とインプラントに関連するよくある2つの質問
奥歯とインプラントに関連するよくある質問は、
①奥歯にインプラントを入れた場合の寿命は?
②奥歯をインプラントで治療できない可能性はある?
の2つです。
それぞれお答えしていきますね!
4-1:奥歯にインプラントを入れた場合の寿命は?
A.奥歯に限った話ではありませんが、インプラントの平均寿命は約10年~15年以上だと言われています。
というのも、厚生労働省委託事業では、以下のように公表されているからです。
部分および全部欠損症例における 10~15 年の累積生存率は上顎で約 90%程度、下顎で 94%程度である。また抜歯即時埋入や骨移植を伴った埋入では若干生存率が下がるものの 87~92%程度である。
厚生労働省委託事業「歯科保健医療情報収集等事業」歯科インプラント治療のための Q&Aより引用
ただし、すべての方のインプラント寿命が10年~15年になるわけではありません。
上記にも記載されているとおり、約10~15年たっても約9割の方がインプラントの状態を保持しているので正確な平均寿命はもっと長いと考えられます。
4-2:奥歯をインプラントで治療できない可能性はある?
A.こちらも奥歯に限った話ではありませんが、できない可能性はあります。
具体的には、
①未成年の方(20歳以下)
②妊娠中の方
③全身疾患や持病のある方
④虫歯や歯周病がある方
⑤あごの骨が薄い・少ない方
といった特徴を持つ方は、すぐにインプラント治療を行えない可能性が高いです。
ただし、それぞれ対処法があるため、諦めずに一度インプラントに積極的な歯医者で相談してみるのがおすすめでしょう。
5:奥歯にインプラントを入れるメリット・デメリットの結論
それでは最後に、奥歯にインプラントを入れるメリット・デメリットの重要なポイントを簡単におさらいしていきます。
インプラントを奥歯に入れるメリットは、
①自分の歯のようにしっかり噛める
②入れ歯のような違和感や痛みがない
③隣接する奥歯に負担をかけずに済む
④噛み合わせのバランスが整う
⑤骨吸収の進行を抑えやすくなる
⑥発音しやすくなる
の6つです。
一方で、
①保険適用の治療に比べると高額
②保険適用の治療に比べると治療期間が長い
③骨を増やす外科手術が必要になる可能性がある
といった3つのデメリットもあります。
そのため奥歯にインプラントを入れるか迷った際には、
①CT診断が可能
②骨造成などの外科手術にも対応
③メリットだけでなくデメリットもしっかり説明してくれる
④インプラント以外の治療の選択肢も豊富
⑤インプラントを入れた後のアフターフォローも手厚い
の5つが重視された歯医者で相談をすると、納得のいく治療の選択がしやすくなります。
以上、今回は「奥歯とインプラント」をテーマに紹介しました。
本記事を読んでわかりにくい部分がある場合には、直接お口の中を拝見した上で画像などを使って説明することも可能です。
ご不安な点や気になることがある際には、遠慮なくご相談くださいませ!