「お口全体の健康寿命を伸ばしたいなら、インプラントを検討したほうがいい」
こんなことがよく言われていますし、私も同感です。
とはいえ、
インプラントが、なぜお口全体の健康寿命を伸ばすのに役立つのか?
メリットばかり語られがちなインプラントに、デメリットはないのか?
という点が気になる方も多いですよね。
そこで本記事では、そんなインプラントのお悩みを、以下の内容を中心に日本口腔インプラント学会所属の歯科医師視点から解決していきたいと思います。
①インプラントの5つのメリット
②インプラントの5つのデメリット
③デメリットがあるのにインプラントを選ぶのはどんな人?
④インプラントを選ぶか迷った際の3つの対処法
本記事を読めば、歯を失ったときに、インプラントを治療の選択肢に入れるべきかの判断が劇的に楽になる可能性が高いです。
まずは、ご一読くださいね!
【執筆・監修者】田口 耕平
日本接着歯学会
日本口腔インプラント学会
日本補綴歯科学会・専門医
国際口腔インプラント学会・認定医
日本糖尿病協会登録歯科医
北戸田COCO歯科 院長
【詳しい経歴はこちら】
1:インプラントの5つのメリット
歯を失ったときにインプラントを治療の選択肢に入れるメリットは、大きくわけて以下の5つです。
①自分の歯と同じ感覚で噛める
②自分の歯と遜色ない見た目
③隣接した歯に負担をかけずに済む
④他の人工歯よりも長持ちしやすい
⑤骨が痩せるのを防ぎやすい
それぞれどういうことか、お話していきますね!
1-1:自分の歯と同じ感覚で噛める
インプラントのメリット1つ目は、「自分の歯と同じ感覚で噛める」です。
- 自分の歯(天然歯)
- インプラント
- ブリッジ
- 入れ歯
の4つを比べたときに、大きく異なるのは噛む力です。
具体的には、以下の表のように噛む力が変わってきます。
▼治療法別の噛む力の目安
お口の中の状態 | 噛む力 |
---|---|
すべて自分の歯 | 100% |
インプラント | 70~85% |
ブリッジ | 60~70% |
部分入れ歯 | 30~40% |
総入れ歯 | 10~20% |
上記のように歯によって噛む力が変わってくる理由は、
- 自分の歯やインプラント:周囲の歯の力を借りない自立式の歯
- ブリッジや入れ歯:周囲の歯の力を借りる依存型の歯
といった歯の形状の違いが関係しています。
そのため、自分の歯を失ったときの治療の選択肢として、噛む力を重視する場合にはインプラントを選んだほうがメリットが大きいと言えるのです。
1-2:自分の歯と遜色ない見た目
インプラントのメリット2つ目は、「自分の歯と遜色ない見た目」です。
ブリッジや入れ歯は周囲の歯の力を借りる依存型の作りのため、人工歯を連結させる必要があり、自分の歯と同じようには仕上げられません。
また、保険適用のブリッジや入れ歯のは、使用できる材料が限られているため、
- 単一の既存色
- 透明感ない
- 艶がない
- 経年劣化で着色・変色しやすい
- 金具が目立つ(入れ歯の場合)
という点で、どうしても自分の歯と同じように仕上げられないデメリットがあるのです。
一方で、インプラントは自分の歯と同じように自立式のため、自分の歯と遜色ない仕上がりにできます。
また、インプラントは自費診療になるため、
- グラデーションのある自然な色合い
- 透明感がある
- 艶がある
- 経年劣化しても着色・変色しにくい
といった審美性の高い素材を使用できるのです。
そういった点から、「人工歯だとバレたくない」「口元を美しく見せたい」という方はインプラントを選んだほうがメリットが大きいでしょう。
1-3:隣接した歯に負担をかけずに済む
インプラントのメリット3つ目は、「隣接した歯に負担をかけずに済む」です。
インプラントは土台となる顎骨にインプラント体を埋め込んで人工歯を支えるため、自分の歯のように自立しています。
そのため、周囲の歯に負担をかけずに済みます。
一方で
- 入れ歯:周囲の歯に金具をかけて、歯がない部分にかかる力を補う
- ブリッジ:隣接した歯を大きく削って、歯がない部分にかかる力を補う
といった作りになっているため、本来は関係のない健康な歯にまでダメージや負荷がかかってしまいます。
つまり、お口全体の健康を長い目で見た際には、他の治療法よりもインプラントのほうが良好な状態を保ちやすい作りになっているのです。
1-4:他の人工歯よりも長持ちしやすい
インプラントのメリット4つ目は、「他の人工歯よりも長持ちしやすい」です。
具体的には他の治療法の平均寿命と比べると、以下のような違いがあります。
▼治療法別の平均寿命の目安
治療法 | イメージ | 寿命 |
---|---|---|
インプラント | 約10年~15年以上 | |
ブリッジ | 約7年~8年 | |
入れ歯 | 約4年~5年 |
そのため、初期費用は高くても長期的にみると、インプラントはコスパが良い治療だと判断される方も多いです。
なぜなら、インプラントは、
- 担当医の腕(技術や経験)
- 治療後のメンテナンス状態
によっては、約40年以上など半永久的に持つケースも珍しくないからです。
インプラントの寿命については、以下記事でも詳しく紹介しているのであわせて参考にしてみてくださいね!
1-5:骨が痩せるのを防ぎやすい
インプラントのメリット5つ目は、「骨が痩せるのを防ぎやすい」です。
自分の歯(天然歯)は、歯の根っこが顎骨の中に埋まっています。
そのため、噛んだときの刺激が顎骨にダイレクトに伝わり、土台となる顎骨が痩せにくいです。
そして、インプラントは自分の歯(天然歯)と同じように、人工歯根を顎骨に埋め込む作りになっているので、顎骨が痩せにくくなっています。
一方で、ブリッジや入れ歯は、歯を支える土台が骨ではなく近接している歯です。
そのため、噛んでも刺激が顎骨に伝わらなくなり、歯を失ったところからどんどん骨がやせ衰えてしまいます。
結果的に土台となる顎骨が痩せることで、周囲の健康な歯にも悪影響が出てしまうのです。
では次に、そんなインプラントのデメリットを紹介していきます。
2:インプラントの5つのデメリット
インプラントのデメリットは、大きくわけて以下の5つです。
①保険適用外のため治療費がかかる
②治療期間が数ヶ月かかる
③外科手術が必要になる
④定期メンテナンスの必要性が高くなる
⑤歯科医師(歯医者)の違いで治療結果に大きな差が出る
この後に、歯科医師視点でデメリットへの対策なども詳しくお話しているので、ぜひ参考にしてみてください^^
2-1:保険適用外のため治療費がかかる
インプラントのデメリット1つ目は、「保険適用外のため治療費がかかる」です。
とにかく初期費用を安く済ませたい方にとって、保険適用と自費診療の治療費の差は大きいものになります。
▼治療法別の治療費の目安
ブリッジ | 入れ歯 | インプラント | |
---|---|---|---|
治療イメージ | |||
保険相場※1 | 約1万円~2万円 | 約5千円~2万円 | - |
自費相場 | 約5万円~15万円 | 約15万円~80万円 | 約20万円~40万円※2 |
※1:保険は3割負担の場合の料金です。
※2:公益社団法人日本口腔インプラント学会の2015年時点の相場データです。2022年現在は、オプションを含む総額で1本30万~40万かかるケースが多いです。
※3:上記はあくまでも目安の費用です。
ただし、『他の人工歯よりも長持ちしやすい』でもお伝えしたとおり、インプラントは物によって40年以上持つケースがあります。
そのため、長期視点で見るとインプラントは、
- 長く持つからコスパが良い
- お口全体の健康を守れるから、全体的な治療費を抑えれる
と判断される方も多いです。
そういった意味で、治療費について考える際は、短期視点(初期費用)だけでなく長期視点(何年持つか)でも考えてみるのがおすすめでしょう!
2-2:治療期間が数ヶ月かかる
インプラントのデメリット2つ目は、「治療期間が数ヶ月かかる」です。
治療を早く済ませたい方には、特に気になるポイントだと言えます。
▼治療法別の治療期間の目安
ブリッジ | 入れ歯 | インプラント | |
---|---|---|---|
治療イメージ | |||
治療期間 | 約2週間 | 約1ヶ月~2ヶ月 | 約4ヶ月~5ヶ月※1 |
※1:顎の骨が少ない方は、治療期間がさらに3~9ヶ月前後のびるケースがあります。
※2:上記はあくまでも目安の費用です。
ただし、治療の質という面で考えたときには、早く終わるから良い治療だとは言えません。
『隣接した歯に負担をかけずに済む』でも紹介したように、インプラント以外の治療法は健康な周囲の歯に依存しています。
そのため、すぐに問題は起きなくても、治療期間が短いブリッジや入れ歯は、後々お口全体の健康に悪影響を及ぼすのです。
一方でインプラントは、土台となる顎骨に人工歯根をしっかり結合させるために、どうしても治療終了までに時間がかかってしまいます。
しかし、その分だけ周囲の歯に余計なダメージを与えない自立式の作りを構築でき、お口全体の健康を保持することができるのです。
2-3:外科手術が必要になる
インプラントのデメリット3つ目は、「外科手術が必要になる」です。
手術への恐怖心が強い方にとっては、大きなマイナスポイントだと言えるでしょう。
ただし、手術への不安が大きい方は、以下の環境を満たす歯医者で治療を受ければ、手術リスクをかなり軽減できる可能性が高いです。
- 3DCTを使った精密検査で正確な診断が可能
- 感染対策がしっかり行われている
- 難症例に対応可能な歯科医師が在籍している
- 静脈内鎮静法※を使った手術ができる
そのため、手術への恐怖心が強くインプラントを諦めようか考えている場合には、まずは上記のような信頼できる歯医者を探して相談してみるのがおすすめです^^
静脈内鎮静法とは、精神安定剤を静脈に点滴する方法です。
局所麻酔と合わせることで、身体面だけではなく、心理面もリラックスした状態で治療が受けられます。
静脈内鎮静法を利用された患者さまからは、「いつの間にか治療が終わってしまった」「寝ている間に手術が終わっていた」といった声を聞くことも多いです。
※当院では、静脈内鎮静法を使用したインプラント手術を受けられます。
2-4:定期メンテナンスの必要性が高くなる
インプラントのデメリット4つ目は、「定期メンテナンスの必要性が高くなる」です。
というのも、インプラントを入れた後は、インプラント周囲炎(しゅういえん)と呼ばれる
- 歯ぐきに炎症を起こし
- あご骨を溶かす
病気を予防するために、歯医者のメンテナンスでお口の環境を良好に保つのが重要になります。
そのため、インプラント治療後は、インプラントを入れる前以上に、数ヶ月に1回のメンテナンスの必要性が高まるのです。
ただし、ブリッジや入れ歯であれば、メンテナンスが必要ないのかというとそうではありません。
どんな治療もメンテナンスをしなければ長持ちしませんし、健康な歯(天然歯)も虫歯や歯周病を防ぐためにはメンテナンスを受けていただく必要があります。
2-5:歯科医師(歯医者)の違いで治療結果に大きな差が出る
インプラントのデメリット5つ目は、「歯科医師(歯医者)の違いで治療結果に大きな差が出る」です。
歯科医師(歯医者)と一口に言っても、それぞれ得意分野が異なります。
そして、インプラントはより専門的な治療になるため、歯科医師の技術や経験によって治療結果に差がつくケースが多いです。
そのため、健康保険の治療に比べると、より歯科医師(歯医者)選びが大切になるのが患者さまの大変なポイントだと言えます。
とはいえ、インプラントに適した歯医者を見抜く方法を知っていれば、ある程度の時間や手間をかけることで理想的な歯科医師(歯医者)と出会うことは可能です。
インプラントに適した歯医者選びの具体的な方法は、以下記事を読んでいただければOKです!
信頼できる歯科医師(歯医者)をお探しの方は、ぜひ参考にしてみてください^^
3:デメリットがあるのにインプラントを選ぶのはどんな人?
デメリットがあるのにインプラントを選ぶのは、
- 安さより、見た目や使い心地を重視したい
- できるだけこれ以上は歯を失いたくない
- 老後もしっかり噛んで食事を楽しみたい
など、長期的コスパを優先し、歯への投資価値を感じている方です。
逆に言えば、
- 治療期間を短く
- 初期費用を安く
- 外科手術なしで
人工歯を入れたい方にとって、インプラントはおすすめの治療とは言えません。
患者さま自身のご希望やお口の中の状態によって、適した治療は変わってきます。
ここまで読んで、インプラントを選ぶか迷っている場合には、この次に紹介している3つの対処法を試してみてくださいね!
4:インプラントを選ぶか迷った際の3つの対処法
インプラントを選ぶか迷っている場合には、以下3つの対処法を実践するのがおすすめです。
①他の治療法の選択肢も必ずチェックする
②信頼できる情報元から正しいインプラント情報を得る
③セカンドオピニオンの利用で治療への理解を深める
具体的にどうすればいいか、詳しくお話していきますね!
4-1:他の治療法の選択肢も必ずチェックする
インプラントを選ぶか迷っている場合の1つ目の対処法は、「他の治療法の選択肢も必ずチェックする」です。
インプラント以外の選択肢も知ることで、それぞれの治療の短所・長所を正しく比較できるようになります。
また、
- 入れ歯
- ブリッジ
以外の第4・第5の治療の選択肢(歯牙移植や接着ブリッジ)も理解しておくことで、本当の意味で自分に適した治療法を選択できるでしょう。
4-2:信頼できる情報元から正しいインプラント情報を得る
インプラントを選ぶか迷っている場合の2つ目の対処法は、「信頼できる情報元から正しいインプラント情報を得る」です。
インターネット上にはさまざまな情報が流れていますが、
- 個人の体験談(ブログやSNSの情報)
- WEBメディアの過激な内容
をすべて鵜呑みにするのはおすすめしません。
なぜなら、一口にインプラントといっても歯医者(歯科医師)によって、
- インプラントを埋め込む位置や本数
- インプラントの種類
- 担当医の技術
- ドクターやスタッフの質・人数
- 歯医者の設備
- 感染対策にかけるコスト
- 保証の有無と内容
- 立地条件
- 上部構造(被せ物)
などに違いがあり、個人の体験談や過激な内容がすべてのインプラント治療に当てはまるとはいえないケースが多いからです。
そのため、基本的なインプラントについては、以下のように信頼できるサイトから情報を集めるのがおすすめです。
その上で、気になる歯医者があれば、歯科サイトのブログなどから
- インプラントにどう取り組んでいるか
- インプラントについてどのように情報発信しているか
を調べてみたほうが良いでしょう。
4-3:セカンドオピニオンの利用で治療への理解を深める
インプラントを選ぶか迷っている場合の3つ目の対処法は、「セカンドオピニオンの利用で治療への理解を深める」になります。
セカンドオピニオンとは、患者さまが納得してご自身の診療(検査・診断・治療)の選択・決断ができるように、他の歯医者の歯科医師に意見を求めることです。
具体的には、セカンドオピニオンを利用することで
- 1人目の担当医の話が適切か判断できる
- 治療費の適正価格がわかる
- 設備や保証制度の手厚さの違いがわかる
- インプラントへの理解が深まり、治療の選択肢が広がる
などのメリットが得られ、「どの治療」「どの歯医者」を選ぶか選択しやすくなります。
5:インプラントのメリット・デメリットの結論
それでは最後に、インプラントのメリット・デメリットについて重要なポイントを簡単におさらいしていきます。
歯を失ったときにインプラントを治療の選択肢に入れるメリットは、
①自分の歯と同じ感覚で噛める
②自分の歯と遜色ない見た目
③隣接した歯に負担をかけずに済む
④他の人工歯よりも長持ちしやすい
⑤骨が痩せるのを防ぎやすい
の5つです。
一方でインプラントには、
①保険適用外のため治療費がかかる
②治療期間が数ヶ月かかる
③外科手術が必要になる
④定期メンテナンスの必要性が高くなる
⑤歯科医師(歯医者)の違いで治療結果に大きな差が出る
といった5つのデメリットがあります。
そのためインプラントは、
・安さより、見た目や使い心地を重視したい
・できるだけこれ以上は歯を失いたくない
・老後もしっかり噛んで食事を楽しみたい
など、歯への投資価値を感じている方におすすめの治療法です。
また、インプラントを選ぶか迷った場合には、
①他の治療法の選択肢も必ずチェックする
②信頼できる情報元から正しいインプラント情報を得る
③セカンドオピニオンの利用で治療への理解を深める
の3つの対処法を実践すると、あなたに適した治療法を選びやすくなります。
以上、今回はインプラントのメリット・デメリットについて詳しくお話しました。
お口の中を直接拝見することで、患者さまにもっと寄り添ったアドバイスをすることも可能です。
ぜひ一度、無料カウンセリングのご利用を検討してみてください^^