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歯周ポケットとは?抜歯回避のための治療法とよくある質問10選

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一般歯科

歯周ポケットとは?抜歯回避のための治療法とよくある質問10選

歯磨き粉のCMなどでたまに目にする”歯周ポケット”の文字。

歯周ポケットが深くなるといけないという知識はあっても、なぜ深くならないようにする必要があるのかを正しく理解している人は少ないと思います。

とはいえ、歯周ポケットへの理解を深めておけば、あなたが歯を失う確率を格段に減らせます!

そこで本記事では、重度歯周病治療にも対応できる北戸田COCO歯科・院長の田口が「抜歯回避のために知っておくと役立つ歯周ポケット情報」を簡単に紹介していきます^^

歯科医師:田口
歯科医師:田口

記事後半では、患者さまからよくいただく歯周ポケット関連の10個の質問にお答えしています。

あわせてご一読くださいね!

【執筆・監修者】田口 耕平
日本接着歯学会
日本口腔インプラント学会
日本補綴歯科学会・専門医
国際口腔インプラント学会・認定医

北戸田COCO歯科 院長
【経歴はこちら】

歯科医師:田口耕平

1:歯周ポケットとは?深いと何が危険なの?

歯周ポケットとは?深いと何が危険なの?

歯周ポケットとは、歯と歯ぐき(歯肉)の間にある”ミゾ(溝)”のことです。

このミゾにプラーク(歯垢:細菌と代謝物のかたまり)や歯石が溜まり、炎症が起きることで歯周ポケットがどんどん深くなっていきます。

ミゾが深くなると、

  • 歯ぐきが腫れたり
  • 口臭が発生したり
  • 知覚過敏になったり(冷たいものや熱いものがしみる)

する症状が出るため、お口の中を清潔な状態に保たなければなりません。

そして、あまりにミゾが深くなってしまうと、歯周病が進行して歯を支える骨(歯槽骨)が溶け、最後には歯が抜け落ちてしまうので注意が必要です。

実際に、日本人が歯を失う原因の第1位は歯周病となっています。

▼日本人が歯を失う原因TOP3

  • 1位:歯周病(37.1%)
  • 2位:虫歯(29.2%)
  • 3位:破折※(17.8%)

※出典:永久歯の抜歯原因調査|8020調査・研究事業|8020推進財
※破折(はせつ)とは、割れたり折れたりひび割れした歯のことです。

上記の理由から「歯周ポケットが深くなる=歯を失う」のを防ぐためには、患者さまご自身にも適切な予防法や治療への理解を深めていただくことが重要になります。

歯科医師:田口
歯科医師:田口

では次に、「歯周ポケットの深さが何mmになったら危険なのか」「どんな予防や治療が抜歯を防ぐのに有効なのか」について詳しくお話していきます。

2:【段階別】歯周ポケットの深さ&抜歯を回避する治療法

【段階別】歯周ポケットの深さ&抜歯を回避する治療法

歯周ポケットの深さは、歯医者で調べられます。

中には、「歯周ポケットが◯mmになっていますよ」と担当医や歯科衛生士から言われた経験がある方もいるかもしれませんが、

  • 健康な状態:1mm~3mm
  • 初期の歯周病:4mm〜5mm
  • 重度の歯周病:6mm以上

のように歯周ポケットの深さによって、歯周病の重症度を判別します。

また、

  • 奥から2番目の歯の歯周ポケットは深くても
  • 前歯は歯周ポケットが深くない

など、歯周ポケットの深さは歯1本1本で異なるため、同じ人のお口の中でも歯によって治療法を変えるのが一般的です。

歯科医師:田口
歯科医師:田口

では次に、歯周ポケットの深さにあわせて、どのような治療法を行う必要があるのかについて解説していきます。

2-1:1mm~3mmの場合

歯周ポケットの深さが1mm〜3mmの場合には、健康な状態だと判断できるため、急いで行う治療はありません。

ただし、歯周ポケットは年齢とともに深くなる傾向があるため、今後も深くなるのを予防するために

  • ご自宅でのセルフケア
  • 歯医者の定期検診&クリーニングを受ける(約3~6ヶ月に1回)

といった対応を継続して行い、歯にプラークが付着するのを防ぐ必要があります。

また、歯医者の定期検診でTBI(歯磨き指導)を受けることで、ご自宅でのセルフケアをより効果的に行えるようになります。

歯科医師:田口
歯科医師:田口

歯周ポケットが1〜3mmの歯は現在の良好な状態を維持できるように、歯医者と協力して引き続き歯周病予防に力を入れていきましょう!

2-2:4mm〜5mmの場合

歯周ポケットの深さが4mm〜5mmの場合には、初期の歯周病(軽度歯周炎)だと判断されます。

この段階まで歯周ポケットが深くなると、

  • 歯磨きの際に出血したり
  • 歯ぐきが赤く腫れてきたり
  • 歯がしみたり

する症状が出ます。

歯ブラシが届かない位置まで歯周ポケットが深くなっているため、セルフケアでは改善が見込めず、歯医者での治療が必須です。

具体的には、

  • 歯周ポケット内に付着した歯石(石灰化して硬くなったプラーク)を
  • 歯医者の専用機材で除去して再付着を防ぐ
  • ”SRP(エスアルピー)”

と呼ばれる処置を行います。

歯科医師:田口
歯科医師:田口

歯周ポケットが4〜5mmの歯は、これ以上歯周ポケットが深くならないようにするために歯医者で早急に治療を受けましょう!

2-3:6mm以上の場合

歯周ポケットの深さが6mm以上の場合には、重度の歯周病(重度歯周炎)だと判断されます。

この段階まで歯周ポケットが深くなると、

  • 歯周ポケットから膿が出る
  • 歯がグラグラする
  • 口臭が強くなる
  • 歯ぐきが下がって歯が長く見える

などの症状が出ます。

歯を支えている骨も溶け、歯周ポケットも非常に深くなっているため、歯医者で外科処置(歯周外科治療)を受けないと状態が改善されません。

具体的には、

  • フラップ手術(歯ぐきを部分的に切開して、目視で歯石等を確認しながら除去する)
  • 歯周組織再生療法(歯周病で失われた歯ぐきや骨を再生させる)

などの外科処置を行って歯周ポケットの深い部分の環境を整え、歯周病が再発しにくい状態にします。

ただし、歯周ポケットがあまりに深くなり、歯を支える骨がほとんど無くなっている場合には、外科処置を行っても改善が期待できないため抜歯が必要になる可能性が高いです。

歯科医師:田口
歯科医師:田口

歯周ポケットが6mm以上の歯は、抜歯リスクが非常に高くなっています。

歯を救えるかどうかの瀬戸際なので、可能な限り早く歯医者を受診しましょう!

3:歯周ポケットについてよくある質問10選

歯周ポケットについてよくある質問10選

ここからは歯周ポケットについて、患者さまからよくいただく10個の質問に質問にお答えしていきます。

3-1:歯周ポケットの検査はどのようにするの?
歯周ポケットの検査はどのようにするの?

A.プローブ(探針)と呼ばれる目盛りのついた器具を歯と歯ぐきの間に差し込んで、歯1本1本の歯周ポケットの深さを調べます。

また、他にも

  • エックス線や歯科用CT(歯を支える骨の喪失量)
  • 歯の動揺度(揺れ具合)
  • プラークの付着率(歯表面の汚れ)

などをチェックして、歯周病の重症度を総合的に判断するケースが多いです。

3-2:歯周ポケットの検査は痛くないの?

A.プローブを差し込む際に、25g程度と非常に軽い圧しか加えませんので、痛みはあまり感じないケースが多いです。

ただし、患部が炎症を起こして敏感になっている場合、器具の先端が歯肉に触れるとチクチクしたような違和感や痛みを感じることがあります。

歯科医師:田口
歯科医師:田口

痛みが強い場合には、麻酔をすることも可能です。

痛みが気になる場合には、担当医に相談してみましょう!

3-3:20代で歯周ポケットが深くなることはある?

A.あります。

というのも、歯周ポケットが深くなる主な原因はプラーク(歯垢:細菌と代謝物のかたまり)によるものだからです。

つまり、お口の中の衛生環境が悪い方であれば、若い方でも歯周ポケットが深くなります。

ただし、傾向として歯周ポケットが深い人は若年層よりも年配者に多いです。

実際に2016年歯科疾患実態調査(厚生労働省)によれば、”45歳以上の約5割が歯周ポケット4mm以上の歯がある”といったデータも出ています。

歯科医師:田口
歯科医師:田口

どちらにしても、年齢関係なく「歯医者の定期検診&クリーニング」「日々のセルフケア」を徹底することで歯周ポケットが深くなるのを予防できますよ!

3-4:歯周病以外が原因で歯周ポケットが深くなることはある?

A.あります。

具体的には、

  • 合わない被せ物
  • 歯ぎしりや食いしばり
  • 噛み合わせが悪い

などによって一部の歯に過度な負荷がかかると、歯周病がそこまで進行していなくても歯周ポケットが深くなるケースがあります。

他にも、

  • 横や斜めに生えた親知らず
  • 口呼吸や喫煙などの生活習慣や癖
  • 糖尿病などの疾病

などが理由で、歯周ポケットが深くなるのを加速させてしまうケースがあるため注意が必要です。

歯科医師:田口
歯科医師:田口

歯周ポケットが深くなる原因は1つではなく、複数の要因が絡み合っているケースも多いです。

そのため、まずは歯医者の検査で歯周ポケットが深くなった原因を洗い出し、適切な治療を受けるようにしましょう!

3-5:歯周ポケットが深い場合、どこの歯医者でも治療は受けられる?

A.6mm以上の重度歯周病の場合には、対応できない歯医者もあります。

なぜなら、6mm以上の重度歯周病だと、歯医者で外科処置(歯周外科治療)を受けないと状態が改善されないからです。

どこの歯医者でも外科処置(歯周外科治療)に対応できる

  • 歯科医師
  • 設備

が揃っているわけではないため、歯周ポケットが深い方は特に歯医者選びが非常に重要になります。

そのため、受診前に歯医者のHP等で歯周外科治療にも対応しているか否かを事前確認しておくと安心でしょう。

歯科医師:田口
歯科医師:田口

当院では「患者さまの歯を可能な限り救いたい」という想いから、歯周外科治療にも積極的に取り組んでおります!

お悩みの際は、お気軽にご相談くださいませ^^

3-6:歯周ポケットが深くて抜歯だと言われたけど、どうにか歯を残せないの?

A.残せるかどうかは、歯医者によって異なるケースがあります。

というのも、『3-5:歯周ポケットが深い場合、どこの歯医者でも治療は受けられる?』でお伝えしたとおり、歯医者によっては重度の歯周病に対応できないケースもあるからです。

ただし、歯周ポケットが深くなりすぎた歯を無理して残してしまうと、

  • 隣の歯を支えている骨に悪影響が出る
  • 抜く時期を先延ばしにした結果、土台の顎骨の形が悪くなって抜歯後の治療が不利になる
  • 骨髄炎になる(顎骨全体が炎症を起こす)

などの問題が発生するケースもあるため、正しい判断が求められます。

そのため、歯を残せる可能性が本当にあるか・ないかを調べたい場合には、

な歯医者で一度相談してみるのがおすすめです。

歯科医師:田口
歯科医師:田口

当院で、重度歯周病の治療についてご相談いただくことも可能です!

セカンドオピニオンとして利用したい場合にも、お気軽にお問い合わせいただければ幸いです。

3-7:歯周ポケットが深くて外科処置が必要な場合には、入院するの?

A.日帰りで手術が可能です。入院の必要はありません。

手術時間は状態にもよりますが、約1~2時間を目安にしていただければと思います。

歯科医師:田口
歯科医師:田口

詳しくは、担当医に確認してみてくださいね!

3-8:歯周ポケットが深いから歯石を取ったけどしみる。どうして?治るの??

A.歯石を取ることで歯の根の部分が露出して、一時的に症状が出るケースがあります。

正しいブラッシングを継続していれば徐々に症状は改善されますので、ご安心ください。

症状がかなり酷い場合には、知覚過敏を緩和するお薬を塗布することも可能です。

歯科医師:田口
歯科医師:田口

こちらもお悩みの場合には、担当医に相談するのがおすすめです!

3-9:歯周病の治療で歯石を取ったら歯ぐきが下がったけど、大丈夫?

A.問題ありません。

歯石を取ったことで炎症が治まって、歯ぐきが下がったように見えていますが、腫れが引いて正常な状態に戻っただけです。

むしろ、歯ぐきが引き締まるのは治療の効果が出てきた証拠なので、この状態を維持できるようにしていくのが今後の目標になります。

とはいえ、事実として下がったようにみえる歯ぐきが気になる方も多いはずです。

そういった場合には、歯周外科治療(歯ぐきを移植するなど)で見た目を回復させられます。

歯科医師:田口
歯科医師:田口

気になる場合には、ぜひ歯周外科治療が可能な歯医者で相談してみてくださいね!

3-10:治療後に再発を防ぐためのポイントは?

A.プラークの再付着を防ぐのが、1番のポイントになります。

というのも、一度治療が終了して歯ぐきの状態が改善されても、また口腔環境が悪くなれば再び歯周ポケットが深くなってしまうからです。

具体的には、

  • 日々のセルフケア
  • 数ヶ月に1度の歯医者での定期検診&クリーニング

の2つを徹底することで、歯周病の再発リスクを大幅に下げられます。

また、『3-4:歯周病以外が原因で歯周ポケットが深くなることはある?』で説明したように、歯周病以外の要因が重なって歯周ポケットが深くなっている場合には、歯医者で適切な治療を受けることで再発リスクを下げられます。

4:歯周ポケットとは?のまとめ

それでは最後に、「歯周ポケット」について重要なポイントを簡単におさらいしていきます。

本記事のまとめ

歯周ポケットとは、歯と歯ぐき(歯肉)の間にある”ミゾ(溝)”のことで、

・1mm~3mm(健康な状態)→セルフケア&定期検診
・4mm〜5mm(初期の歯周病)→歯医者で専用機材を使ってクリーニング
・6mm以上(重度の歯周病)→歯周外科治療

のように歯周ポケットの深さによって、歯周病の重症度を判別し治療を行います。

また、

・歯周ポケットが深くなる原因は1つではない
・重度の歯周病治療(歯周外科治療)ができる歯医者は限られている

といった理由から、

・正確な検査・診断をしたうえで
・重度の歯周病にも対応できる設備や歯科医師が揃っている

歯医者で治療を受けるのが1番の治療の近道です。

歯医者選びは慎重に行うようにしましょう!

以上、今回は歯周ポケットについて詳しく解説しました。

患者さまが歯周ポケットの深さを知っておくことで、ご自身のお口の中の健康状態(歯周病の進行度)を把握できるようになります。

歯周病は早期に治療すれば歯を失わずに済むので、ぜひ積極的に予防&治療をしていきましょう!

また、すでに歯周病がかなり進行してしまっている場合でも、歯医者選びを丁寧に行えば歯を救える確率が格段に高まります。

歯科医師:田口
歯科医師:田口

当院でも、重度の歯周病患者さまに対応できる環境を整えております!

ご不安な場合には、ぜひ一度お問い合わせいただければ幸いです^^