こんにちは北戸田coco歯科です
インビザラインには適応する症例と向いていない症例があります。
骨格に問題がある「顎変形症(がくへんけいしょう)」ではインビザライン矯正ができるのか気になる方もいるでしょう。
そこで今回は顎変形症でもインビザライン矯正はできるのか、インビザラインに適応する症例をご紹介します。
顎変形症(がくへんけいしょう)とは?
顎変形症(がくへんけいしょう)とは上顎と下顎の成長がアンバランスになり、顎の大きさ・形が前後左右に大きなズレが生じていることを指します。
顎の成長のバランスによるものであるため幼少期にはほとんど異常が見られず、顎が成長するとともに症状がでることが多いです。
□症状
顎変形症の症状には顔が左右非対称になったり、かみ合わせが悪い不正咬合(ふせいこうごう)が起きたりします。
顎変形症に見られる不正咬合には以下のような種類があります。
・上顎前突症…いわゆる「出っ歯」の状態
・下顎前突症…いわゆる「受け口」の状態
・下顎後退症…顎が後ろに引っ込んでいる状態
・上下顎前突症…上下の前歯が突出した状態
・開咬症…奥歯で噛んでも前歯が空いてしまう状態
□原因
顎変形症の原因のほとんどが遺伝によって発症することが多いとされています。
そのため、生まれつき骨格に問題があるというケースがほとんどです。
なお幼少期の指しゃぶり・舌で下顎を押すといった悪い癖や、顎の成長期に頬杖をしているなどの生活習慣によって引き起こされることもありますが、非常に稀なケースです。
□検査方法
顎変形症の検査ではレントゲン撮影(パノラマX線写真)・セファログラム(頭部X線規格写真)・歯科用CT・口腔内写真・顔貌写真などを用いて行われます。
□治療方法
顎変形症の治療は、矯正治療と外科手術を組み合わせて行います。
まずは術前矯正を行い、つぎに外科手術、最後に術後矯正・保定期間と3つの段階で進みます。ここでは顎変形症の手術方法についてご紹介します。
□上顎の手術
上顎の骨に問題がある場合、「Le Fort(ルフォー)Ⅰ型骨切り術」と呼ばれる手術を行います。これは上顎の骨を切り適切な位置に移動して、チタン製のプレートなどで固定する方法です
□下顎の手術
下顎の骨に問題がある場合、「下顎枝垂直骨切術(かがくしすいちょくこつきりじゅつ)」・「下顎枝矢状分割術(かがくししじょうぶんかつじゅつ)」と呼ばれる手術を行います。
前者は歯が生えている部分よりも後ろにある骨を垂直に骨切りして適切な位置に動かす方法で、後者はえらの部分の骨を骨切りして適切な位置に動かす方法です。
なお骨格のバランスを整えるために、下顎の先端の骨を整える「オトガイ形成術」を併用する場合があります。
顎変形症でもインビザラインは可能?
顎変形症は歯並び・かみ合わせだけでなく、顎の骨が大きくずれている状態であるため、インビザライン矯正・ワイヤー矯正などの歯列矯正のみで治すことはできません
顎の骨が大きくずれている状態で矯正治療を行うと、歯と歯ぐきに大きな負担がかかることがあります。
顎変形症の治療方法には、ワイヤー矯正で歯並びを整えた後、骨切り術と呼ばれる顎の骨を切る手術を行う、またはその逆で外科手術が終わった後に矯正治療で歯を並べていく治療を行います。
そのため、顎変形症と疑われる場合はまず歯科医師に相談して治療計画を立てていく必要があります。
骨切り手術などの大掛かりな手術は、一般歯科医院では行えないため、大学病院との連携が必要になってきます。
顎変形症の矯正治療の流れ
顎変形症の治療は成長期を過ぎた18歳頃から行うことができます。治療の流れは以下のとおりになることが一般的です。
・検査・手術計画
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1.検査・手術計画
顎変形症で手術を行う場合、治療の精度が求められるため詳しい検査と手術計画が必要になります。
2.術前矯正
術前矯正ではワイヤー矯正を行うことが多いです。
この矯正では骨切り術によって顎を移動したとき、上下のかみ合わせが合うように歯並びを整えます。なお矯正期間はおおよそ1~2年になることが多いです
3.手術
口の中から上顎の骨や下顎の骨を切り、最も良い位置に移動してチタン製のプレートやネジなどで固定します。
手術は全身麻酔で行うため痛みを感じることはありません。
4.術後矯正
術後矯正では正しいかみ合わせを安定させたり、微調整したりするために仕上げの矯正を行います。この期間は約1年ほどかかることが多いです。
顎変形症は保険適用になる?
顎変形症の治療では矯正や手術を行うため、費用面で不安になることがあるでしょう。
しかし顎変形症の矯正治療は、以下の条件を満たしていると保険適用になることがあります。
条件①:顎変形症の治療で外科手術・術前矯正・術後矯正が必要と診断された方
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保険適応になると約300,000円で矯正治療を受けることができます。
インビザラインは保険適用対象外
上記で解説したとおり、顎変形症の矯正治療は保険適用になることがありますが、インビザラインをはじめとするマウスピース矯正は保険適応外になります
これは厚生労働省の定める保険のルールには、使用する矯正装置について決められているためです。
そのため顎変形症の矯正治療をインビザラインで行うことはできますが、その場合外科手術・矯正治療も全て自由診療で対応することになります
インビザライン矯正が適応になるケース
最後にインビザライン矯正で治せる歯並びについて見ていきましょう。
インビザライン矯正では多くのケースに適応します。
ただこれらのケースでは軽度でなおかつ抜歯の必要がない場合、抜歯をするケースでも歯の移動距離が少ない場合に適応になることが多いです。
上顎前突(出っ歯)
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□上顎前突(出っ歯)
上顎前突症(じょうがくぜんとつ)とは、上の前歯が突出した状態の歯並びです。顎の骨に問題がなく、軽度である場合インビザラインで治すことができます。
□叢生(凸凹した歯並び)
叢生(そうせい)とは、凸凹した歯並びや重なり合った八重歯のことです。多くのケースでインビザラインで歯並びを整えることができます。
□空隙歯列(すきっ歯)
空隙歯列(くうげきしれつ)とは、歯と歯の間が空いている歯並びのことです。隙間が小さいケースではインビザラインで改善することができます。
□下顎前突(受け口)
下顎前突(かがくぜんとつ)とは下の前歯が上の前歯よりも前に出ている歯並びのことです。
顎の骨に問題がなく、軽度である場合インビザラインで治すことができます。
□開咬
奥歯で噛んでも前歯が空いてしまうかみ合わせのことです。
開咬の程度が軽度であればインビザラインで改善することができます。
□交叉咬合
交叉咬合(こうさこうごう)とは、かみ合わせたときに、複数の歯が反対になっている歯並びのことです。
1~2歯のかみ合わせが反対になっているケースではインビザラインで治療することができます。
□過蓋咬合
過蓋咬合(かがいこうごう)とは、かみ合わせが深い状態のことを指しており、下の前歯が上の前歯で隠れてしまう歯並びのことです。
軽度の過蓋咬合であればインビザラインで治療することができます。
□矯正後の後戻り
後戻りとは、矯正治療できれいに並べた歯が元の歯並びに戻ることです。
インビザラインでは後戻りした歯並びを再び整えることができます。
当院のインビザライン矯正
当院では、インビザラインだけでなく、白い器具を使ったワイヤー矯正やハイブリッド矯正など様々なメニューの中からその人にあった方法をご提案させていただきます
詳しくは以下のリンクからご確認ください
まとめ
顎変形症では上顎と下顎の骨の大きさ・形が問題であるため、インビザライン矯正のみで治すことはできません。
顎変形症の治療には、ワイヤー矯正と顎の骨を切る骨切り術が必要になります。
なお条件を満たせば保険適用になる可能性があるため、ご自身が顎変形症かどうかは歯科医院で検査を受けることで確認することができます。
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