こんにちは。北戸田coco歯科です。
「子どもが歯を痛がっている時、大人と同じ鎮痛剤を半分の量にして飲ませても大丈夫?」
「うちの子は体格がいいから大人用の鎮痛剤を飲ませてもいいわよね?」
答えはNO。
たとえ半分の量にしても、15歳未満の子どもには大人用の鎮痛剤を飲ませてはいけません。なぜなら、子ども用と大人用の鎮痛剤では成分が違うからです。
風邪などで小児科に行くと、鎮痛剤はほとんどの場合で「カロナール」が出ます。
カロナールは15歳未満の子どもが飲んでも安全な鎮痛剤なので問題ありません。
でも、カロナールはお医者さんでしかもらうことができないので、子どものが歯が急に痛くなったら何を飲ませたらいいか迷いますね。
そこで、ここでは子どもが歯を痛がった時に飲んでいい市販の鎮痛剤について、北戸田coco歯科の小児歯科担当医、田口世理奈医師が詳しく解説していきます。
- 【経歴】
- ・日本大学歯学部 卒業
- ・日本大学歯学部歯学研究科歯学専攻修了 博士号取得
子ども用の市販の鎮痛剤は常備しておくといいので、ぜひ読んでおいてくださいね。
1. 子どもが飲んでも安全な鎮痛剤の一覧
子どもの歯が痛い時に、飲ませても安全な鎮痛剤の薬名と対象年齢は以下の表のとおりです(2022年5月現在)。
薬の名前 | 主成分 | 含有量 | 対象年齢 |
カロナール200 | アセト アミノフェン |
200mg | 3〜14歳 |
---|---|---|---|
小児用バファリンCⅡ | 33mg | 3〜14歳 | |
小児用 バファリンチュアブル |
50mg | 3〜14歳 | |
バファリン ルナJ | 100mg | 7〜14歳 | |
小中学生用ノーシンピュア | 200mg | 7〜14歳 |
年齢に応じて1回に何錠飲むか異なります。用法・用量をよく読んで飲ませましょう。
2. 子どもの歯の痛み止めで飲んでいいのはアセトアミノフェンのみ
子どもの歯の痛み止めでおすすめなのは、「アセトアミノフェン」という成分の鎮痛剤です。
子ども用の鎮痛剤には、アセトアミノフェンが使われています。
アセトアミノフェンは他の鎮痛剤の成分に比べて副作用が出にくく、入学前の子どもから妊婦さん・授乳中の人でも安心して飲むことができます。
他の鎮痛剤でよく自宅に常備しているものとしては、バファリンやEVE、ロキソニンなどがありますね。
でも、これらはアセトアミノフェンが主成分ではないため小児には使えません。
鎮痛剤の名前 | 主成分 |
◯ カロナール | アセトアミノフェン |
✕ バファリン | アスピリン、イブプロフェン |
✕ EVE | イブプロフェン |
✕ ロキソニン | ロキソプロフェンナトリウム水和物 |
3. アセトアミノフェンでも注意しなければならないこと
薬のパッケージに「アセトアミノフェン」と書いてあっても、注意しなければならないことがあります。それは、以下のようなことです。
- 1. アセトアミノフェンの含有量が多い場合
- 2. アセトアミノフェン以外の鎮静成分が混ざっている場合
詳しく説明しますね。
3-1. アセトアミノフェンの含有量が多い場合
アセトアミノフェンのみの鎮痛剤でも、含有量が多い場合(200mg以上)の場合は子どもには危険です。
大人用のアセトアミノフェンは含有量が多いので、必ず小児用のものを選びましょう。
※中には大人用でも「半分に割れば子どもでも使用可能」と書いてあるものがあります。その場合は使用上の注意をよく読んで使ってください。
3-2. アセトアミノフェン以外の鎮静成分が混ざっている場合
大人用の鎮痛剤にはアセトアミノフェンとイブプロフェンなど、アセトアミノフェン以外の鎮静成分が混ざっている鎮痛剤もあります。
たとえ「アセトアミノフェン」と書いてあっても、他の鎮静成分が混ざっている場合は小児には使えないので注意しましょう。
4. なぜ子どもは大人の薬を飲んではいけないの?
基本的には子どもが大人と同じ薬を飲んではいけません。その理由は以下の2つです。
- ・代謝できないから
- ・副作用が出るから
ひとつずつ詳しく解説していきますね。
4-1. 代謝できないから
子どもの内臓は未発達なので、大人のように代謝できない成分があります。
薬は飲むと肝臓で代謝されて、効き目成分がちょうどいい分量に減らされて体内をめぐります。
体内を一周した薬は再び肝臓に戻ってきて、不要な成分が腎臓に送られておしっことして出るしくみです。
この機能がきちんと働くのが15歳以上とされています。
いくら体格が良くても14歳までは内蔵の機能がまだ発達しきれていないため、薬の成分がきちんと代謝されません。
このような理由から、多くの小児用の鎮痛剤には「15歳未満」「15歳以上」など、15歳というラインで区切られているのです。
4-2. 副作用が出るから
大人用の鎮痛剤に使われているイブプロフェンやロキソプロフェンは、子どもが飲むと以下のような重い副作用が出る可能性があることが分かっています。
- ・ロキソプロフェン:吐き気、嘔吐、発疹、胃腸障害など
- ・イブプロフェン :喘息、ライ症候群※など
※ライ症候群の症状
嘔吐、倦怠感、性格の変化、無反応、「いつ・どこ」などが分からなくなる見当識(けんとうしき)障害、けいれん、意識喪失など
参考:
MSDマニュアル家庭版
大日本住友製薬 薬の「こまった!」解決帳 選ぶ時編Vol.3
このような危険があるので、大人用の薬は子どもには飲ませないでください。
5. 子どもの鎮痛剤Q&A
ここからは、子どもの鎮痛剤についてよくある質問についてお答えしていきます。
5-1. 大人の鎮痛剤を半分に割れば飲ませてもいい?
飲ませてはいけません。分量を少なくしても薬の成分が変わらないからです。
子どもに良くない成分の鎮痛剤は少量でも危険です。
必ず「小児用」「ジュニア」などが記載された、子ども用の鎮痛剤を飲ませてください。
5-2. 自宅に保管しているカロナールを飲んでもいい?
開封していないもので使用期限の3年間以内なら大丈夫です。その理由は、カロナールの使用期限は3年間だからです。
使用期限の確かめ方は、処方箋の袋や薬の説明書、薬が束になって入っている銀色の袋などに書いてある使用期限を見ます。
使用期限が切れている場合は薬の効果がないだけでなく、副作用が出る場合があります。
使用期限が分からないものや切れているものは飲ませないよう注意しましょう。
5-3. 兄弟で同じ薬を飲ませてもいいの?
年令によって1回に飲んでいい含有量が異なるので、兄がもらった薬を弟に飲ませるなど年齢が違う場合は注意しましょう。
カロナールの1錠あたりの含有量は、「カロナール◯◯」と書いてある後ろの数字を確認します(200、300、500など)。
例えばカロナール300なら、1錠の含有量は300mgです。
体重1kgに対して1回10〜15mgで、1日の総量は1kgに対して60mg未満と定められています。
日本ジェネリック株式会社では、体重ごとのカロナールの1日の接種可能な量を表にまとめています。
詳しく知りたい方は、下の表をクリックすると見ることができますよ。
参考:日本ジェネリック株式会社
まとめ
子どもが歯を痛がっている時に飲ませていい薬は、アセトアミノフェンが主成分の子ども用の鎮痛剤のみです。
大人用のバファリンやイブなどは子どもには飲ませてはいけないので注意しましょう。
北戸田coco小児歯科では、子どもの歯の専門家が歯の治療や相談に当たっています。困ったこと・気になることがあったらお気軽にご相談くださいね。
- ◆この記事のまとめ
- 1. 基本は小児用の鎮痛剤
- 2. 子どもに安全な鎮痛剤はアセトアミノフェンのみ
- 3. アセトアミノフェンでも含有量に注意し、用量・用法を必ず守る
- 4. 大人用の鎮痛剤だと子どもは代謝できない
- 5. 大人用の鎮痛剤を子どもに飲ませると重い副作用が出るリスクが高い
- 6. 自宅に保管しているカロナールなどの処方箋は使用期限が3年以内のものならOK
- 7. 年齢で飲んでいい量が違うので、基本的に兄弟でも同じ薬は飲ませない