こんにちは。北戸田coco歯科です。
「小さな子どもでも歯の矯正ってできるの?」
「小さな子どもの矯正は痛くないの?」
就学前の小さなお子さんに矯正を行う場合、痛みはないのか、どんな装置をつけるのかと心配ですよね。
でも、ご安心ください。寝ている間だけつけるものやワイヤー矯正のような痛みがないものがほとんどです。
ここでは、就学前からの子どもに対して行う「一期治療」の方法や治療期間などについて、北戸田coco歯科の小児歯科担当医、田口世理奈医師が詳しくご紹介します。
- 【経歴】
- ・日本大学歯学部 卒業
- ・日本大学歯学部歯学研究科歯学専攻修了 博士号取得
1. 子どもの矯正の目的は大人の矯正とは異なる
【一期治療について】
対象年齢 |
6、7〜11歳くらい(乳歯と永久歯が混合) |
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治療期間 |
1〜3年 |
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治療目的 | 永久歯がきれいに生えるための準備 | |
治療内容 | 骨の自然な成長を利用してあごのバランスを整える |
乳歯だけ、あるいは乳歯と永久歯が混ざっている期間に行う矯正治療を「一期治療」といいます。治療期間は1〜3年です。
一期治療の目的は、この後生えてくる永久歯が正しい位置できれいに生えるようための準備をすることです。
具体的には、上下のあごのバランスを整えます。上下のあごのバランスが整うと、歯列もそれに伴って整っていきます。
この時期に行う治療はあごや頭の骨の成長を利用するので、この時期でしかできません。永久歯が生え揃う頃にはあごの成長はほぼ終わっているので、歯の矯正をするには抜歯をするか歯を強制的に動かすしかないのです。
しかし、一期治療の時期に行えば、自然な成長に沿って歯を軌道修正することができます。
2. 一期治療の方法
一期治療の方法には、症状に応じて以下のようなものがあります。
【一期治療の方法】
症状 | 方法(使う装置) | |
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受け口 |
・拡大床 |
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出っ歯 上顎前突(じょうがくぜんとつ) |
・アクチベーター |
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舌癖や指しゃぶり | ムーシールド | |
反対咬合(はんたいこうごう) | リンガルアーチ |
症状別に説明しますね。
3.【症状別の治療法①】受け口・ガチャガチャの歯ならびの矯正
まずは、受け口とガチャガチャの歯並びを改善する治療方法について説明します。受け口とガチャガチャの歯並びに使う装置は以下です。
- ・拡大床(かくだいしょう)
- ・急速拡大床
- ・プレオルソ
3-1.拡大床(かくだいしょう)
- ◎拡大床の特徴
- ・ネジがついたプレートをワイヤーで歯に固定する
- ・自分で取り外し可能
- ・1日12〜15時間程度を目安につける
- ・保護者が1週間に1〜2回ネジを回して徐々にあごを広げていく
- ・治療期間は1〜2年
- ・1ヶ月に1〜2回の通院、徐々に通院回数が減っていく
拡大床は、上あごに取り付けて、ゆるやかに上あごを広げる装置です。上あごは、2枚の骨が中央で合わさると半円形のような形になる構造です。拡大床では、その2枚の骨をネジの力を加えて少しずつ広げます。
受け口やガチャガチャの歯ならびになる原因の多くは、上あごの成長がうまくいかずスペースが狭くなったり上下のあごのバランスが乱れたりすることにあります。
そのため、歯の土台である上あごを広げることによって、上下のあごのバランスや歯ならび、咬み合わせが正しくなるよう導いてあげます。
ただし、自分で取り外せるためお子さんが勝手に外さないように、よく説明するなどが必要です。
3-2. 急速拡大床
- 急速拡大床の特徴
- ・ネジがついたプレートをワイヤーで歯に固定する
- ・取り外しはできない
- ・1日12〜15時間程度を目安につける
- ・保護者が1週間に3〜4回ネジを回して徐々にあごを広げていく
- ・治療期間は2週間〜2ヶ月程度
急速拡大床は強力な力がかかるので、拡大床よりも短い時間でスペースを広げられます。
急速拡大床のメリットは、あごのスペースを広げて歯ならびを良くするだけでなく、気道が広がって息がしやすくなり、喘息やアレルギー性鼻炎などの改善が期待できることです。
つけ始めは違和感を感じる、食べづらいといったことがありますが、1週間程度で慣れることがほとんどです。
3-3. プレオルソ
プレオルソとは、マウスピースを使った子ども用の矯正装置です。対象年齢は4歳〜9歳くらいまでで、拡大床と一緒に使うことが多いです。
プレオルソは歯を直接動かすのではなく、悪い歯並びの原因となっているお口周りの筋肉(舌・頬など)を改善することによって歯ならびや咬み合わせを矯正していきます。
プラスチックと違って柔らかいので口の中に入れても嫌がることがなく、歯型を取る必要もありません。
4.【症状別の治療法②】|出っ歯・上顎前突(じょうがくぜんとつ)の矯正
いわゆる出っ歯、上顎前突で歯が出ている症状には以下の装置を使います。
- ・アクチベーター
- ・ヘッドギア
この2つについても詳しく説明しますね。
4-1. アクチベーター
- ◎アクチベーターの特徴
- ・マウスピースについたワイヤーで上の前歯を中に押し込む
- ・自分で取り外し可能
- ・就寝時のみつける
- ・通院は3〜4ヶ月に1回程度
- ・治療期間は1〜2年程度
アクチベーターは、一般的に上下のあごがズレているような症状に使います。下あごが引っ込んで上の歯が出ている場合にも有効です。
アクチベーターには数種類あり、出っ歯だけでなく受け口を矯正できるタイプもあります。
4-2. ヘッドギア
- ◎ヘッドギアの特徴
- ・上の奥歯(6歳臼歯)にワイヤーをかけ、首にネックバンドをつけて固定する
- ・自分で取り外し可能
- ・就寝時のみつける
- ・通院は3〜4ヶ月に1回程度
- ・主に小学校3〜4年から永久歯の奥歯(12歳臼歯)が生える頃まで
ヘッドギアは、上の歯がズレて出ているような症状に使います。
主に重度の咬み合わせのズレに用いられます。ちょっと仰々しい装置ですが、寝ている間のみに使うので見た目の心配はありません。
5.【症状別の治療法③】舌癖や指しゃぶりの改善
3~5歳くらいで指しゃぶりや舌のくせなどで歯ならびが悪くなっているような場合、「ムーシールド」という小児用のマウスピースを使うことがあります。
- ◎ムーシールドの特徴
- ・ワイヤーのないマウスピース型
- ・自分で取り外し可能
- ・就寝時のみつける
- ・適応年齢は3〜5歳程度まで
ムーシールドは、舌・唇・頬などの筋肉を鍛えて正しく使えるようにトレーニングするものです。
お口周りの筋肉を鍛えて正しく使えるようになると、歯が頬の内側や舌に押されたりせずに正常に生えていくことができます。
寝ている間だけつけるので違和感がなく、痛みもありませんよ。
6.【症状別の治療法④】反対咬合を矯正する
反対咬合とは、上下の歯が逆に噛み合っているような症状です。通常は前歯が下の歯よりもほんの少し前に出ているのですが、これが反対になっていると反対咬合といいます。
リンガルアーチは内側または側に倒れぎみに生えている歯を、ワイヤーの力で強制的に正しい向きに整える装置です。
- ◎リンガルアーチの特徴
- ・奥歯に輪っか状の器具をつけ、歯の裏側にアーチ状のワイヤーを取り付ける
- ・取り外しできない
- ・主に反対咬合に用いる
- ・治療期間は1年程度
歯の裏側に取り付けるため、虫歯になりやすいので、仕上げ磨きを念入りににしてあげる必要があります。
7. まとめ
乳歯が残る子どもの歯は、大人になる前に矯正することで、きれいな歯ならびの永久歯にすることができます。この先何十年も使っていく歯ですから、子どものうちの数年で軌道修正するのがおすすめです。
近年、歯は全身の健康にとても関わっていることが分かってきています。お子さんが大人になってもずっと健康でいられるためにも、子どものうちに歯ならびや咬み合わせを整えてあげましょう。
小さな子どもの歯の矯正は、症状や年齢に応じてきめ細かく対応していくことが重要です。
特に一期治療をする際は、小児専門の歯科医師がいる歯医者にかかるのがおすすめですよ。
北戸田coco小児歯科では、子どもの歯の専門家が歯の治療や相談に当たっています。困ったこと・気になることがあったらお気軽にご相談くださいね。
- ◆この記事のまとめ
- 1. 一期治療の目的は将来生える永久歯の歯ならびや咬み合わせを整えること
- 2.拡大床はゆるやかにあごを広げて受け口やガチャガチャの歯ならびを改善する
- 3. 急速拡大床は強い力であごを広げるが、アレルギー改善の効果も期待できる
- 4. アクチベーターは上下のあごのズレを改善する
- 5. ヘッドギアは上のあごの重度のズレを改善する
- 6. 3〜5歳までの悪い歯並びにはムーシールドで口周りの筋肉トレーニングを行う
- 7. リンガルアーチは内側または側に倒れぎみに生えている歯を強制的に整える